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第27話 鼓動

カーラ 公爵令嬢 銀髪に翠の瞳

レフ  転生者 琥珀狐 カーラの相棒

コラン カーラの想い人(両想い)


ロナルド(ロニー) カーラの兄

シーミオ カーラの母

ロイル  カーラの父


ジャスミン 町の料理店の店主

ケイト   転移者 ジャスミンの店の店員

プラシノ  風の精霊

「あ、あのぅ……」


「ん?」


「そんなに、ずっと見ないでください……」


 レフたちが去った後。


 長椅子に隣同士で座り合い、いろいろな話をした。


 その間もずっと、空色の瞳はカーラの顔を見つめていた。


 カーラ自身は恥ずかしくて、時々しかコランに目線を送れない。


 大体は部屋に置かれた花瓶だとか、扉の方だとか、テーブルに置かれた紅茶の水面だとかを眺めていた。


 でもチラッと見ただけで、いつもいつも目が合うので、ずっと見つめられていることに早い段階から気づいていた。


「だって、嬉しくて。君が、ここにいてくれることが」


「わ、私も嬉しいです。けど……少しずつ、慣らしていきたいというか……ひゃっ!」


 おもむろに抱き寄せられ、カーラはまた顔が熱くなるのを感じた。


 コランの鼓動が、こんなに近くで鳴っている。


 いま顔を上げたら、空色の目がそこにあるのだろうか。


 顔は埋もれているので見られる事がなくなったけれど、赤くなった首筋が見られているような気がして、さらに恥ずかしくなった。


「話したいことが、もっとたくさんあったはずなんだけどな。胸がいっぱいで、いまはただこうしていたいよ」


「殿下」


「コラン」


「コラン、様……」


「様は要らないかな。二人きりの時だけでもさ」


「コ、コラン」


「うん?」


「お、お手柔らかに……」


 ぷはっ、とコランが笑う気配に顔を上げると、思ったより近くに彼の顔があった。


 子供の頃と同じ笑顔でほっとする反面、子供の頃とは違う色気を感じて。


 そんな自分の思考が今日いちばんに恥ずかしく思い、やっぱり顔を上げていられない。


(しまった。いや、何がしまったというわけじゃないんだけど、でも)


「わかった。今日は、このくらいにしておくね」


 そう言って、コランはカーラの額にキスをした。





          ※





 その頃、厨房では……


「悪寒がするわ……!」


 厨房に置かれた小さなテーブルと椅子に腰掛け、レフは何かを察していた。


「風邪か? 神獣サマは病と無縁のはずだけどよ」


 向かいに座って足を組むプラシノは、口ぶりの割に、相変わらず真面目だ。


「違うの、カーラがとられそうな気がしたというか」


「それはご愁傷様だな」


 プラシノが鼻で笑う。


 気を利かせて2人きりにしたのだ、今ごろ甘ったるい時間が流れている事だろう。


「ふん、この複雑な乙女心、あんたにはわからないわよ!」


 完全なる八つ当たりだった。


「ええっと、おふたりさん」


 プラシノの分はシロップ入れに。レフの分はスープ皿に。

 それぞれに合った器に、かいがいしくホットミルクを注ぎながら、ロナルドが口を挟む。


「今日は、本当にありがとな」


 そう言って、器をふたりの前に置いた。


「私は私のやりたい事をしただけだよー、ね?」


「ああ」

 

 嫌な事ならやらないし、興味のない人間とは関わらない。

 プラシノも頷いた。


「そうだよな……」


 ロナルドの相槌が、なんだかキレがない。


「何か気になる?」


「気を、悪くしないでほしいんだが」


 そう前置きするロナルド。


「レフやプラシノは、人間ではないよな。俺たちのように、国という枠組みの中での貴族社会のしがらみなんかも無いわけで。いまはたまたま、俺たちの味方をしてくれているけどさ、もし気が変わったら、もしあの強大な力が敵に回ることがあれば、って考えてしまってさ」


 顔を見合わせる、レフとプラシノ。


「まぁねぇ。否定はしないよ。でも、私が私である限り、カーラの大切なものは一緒に守るよ」


 カーラの味方であることは言うまでもない。


 レフがあまりにも当たり前にそう言うので、もしもの事態を考えすぎる自分が、馬鹿らしく思えたロナルドだった。


「はっ。頼もしいな。余計な心配だったようだ」


「うん、そうだな。俺も嬢ちゃんの事は好きだし」


 砂糖菓子をつまみながら、プラシノが言う。

 レフはそれを聞き逃さなかった。


「え、あんたまさか……」


 プラシノが焦って両手を振る。


「そういうんじゃねぇよ! 嬢ちゃんのことも、嬢ちゃんの家族のことも、俺……俺たちは好ましく思ってるから、ここらの森に住んでんだよ、って意味で」


 わかってるわよ、冗談よーーーーと軽く流して、レフはカミングアウトする。

 この人たちなら、言っても良いだろう。


「しかもねぇ、私、前世はここじゃない世界で人間やってたの。最近、思い出したのだけれど。あ、カーラは知ってるよ。一番最初に話したから。でさ、だから、人間的な感覚も残ってるよ。記憶と一緒に、思い出したんだ」


「「えっ?!」」


「まじかよ」


「どうりで、言葉がよく出てくるんだな」


 腑に落ちたよ、とロナルドは言う。


 御伽噺の中の「言葉を得た使い魔」は、カタコトで描かれる方が多い。

 レフの滑らかなおしゃべりには、皆が驚いていたのだ。


「言語は、違うんだけどね。でも、読めるし話せるよ」


 しかし……と思案しながら、レフは続ける。


「とはいえ社会も環境も、全然違う異世界の感覚だからね。貴族の感覚なんて、わからないし。世間とはズレてることも、多いと思うけどね」


 肩をすくめて言ったあと、レフはスープ皿のミルクを舐めた。

読んでくださり、ありがとうございます!


もうしばらく続きます。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

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