第18話 閑話〜居酒屋ケイト、開店です?!〜
カーラ 公爵令嬢
レフ 転生者 琥珀狐 カーラの相棒
彼 カーラの想い人
ロナルド(ロニー) カーラの兄
シーミオ カーラの母
ロイル カーラの父
ジャスミン 町の料理店の店主
ケイト 転移者 ジャスミンの店の店員
プラシノ 風の精霊
「マミちゃ〜ん! あ、ケイトちゃんだった!」
見覚えのある背中に、駆け寄る。
今日は、ぼろぼろじゃない。
無事に帰れたようで、よかった。
カーラには、前世の記憶があることを、話した。
その上で、お願いして、マミ……ケイトを指名して、お店の料理を運んでもらったのだ。
どうしても、直接、話したくて。
中庭でテーブルに料理を運んでいたケイトが、満開の笑みで振り返る。
「あの時の!」
「呼びつけるようなまねしてごめんね、どうしてもケイトちゃんと話したくて」
「やっぱり、レフちゃんがヒロミさんなんだよね?! あのね、あの時、森の外に送ってもらった時、ヒロミさんの声が聞こえた気がしてさ」
目尻に涙を湛えてニカっと笑う。
相変わらず器用な子だ。
「もしかしてって、思ってたんだ」
そう言って抱きしめられる力の強さが、苦しくて嬉しい。
「助けてくれて、ありがとう」
「ううん、お互い様よう」
前世ではいつだって、マミちゃんの明るさに助けられてきたのだもの。
そうだ、と尻尾をふる、ヒロミーーレフ。
「あのとき、説明もせず転移なんて、驚かせてごめんなさいね! まだ言葉が話せなかったから…………。出会った時も、とびついちゃったの、びっくりしたでしょう? 出会えたのが嬉しすぎて、止まれなくって」
「ううん」
涙をかくすように、レフの背中に顔を埋める。
「私ね。ヒロミさん、地震で、大丈夫だったかなって、ずっと心配してたの」
ふー、と息を吐いて、顔を上げたときには涙は消えていた。強い子だ。
「お互い、あっちの世界では、死んじゃったことになってるんだよね。でも、また会えるなんて、私たち最強すぎない?!」
ああ、そのポジティブさと笑顔。
懐かしくて、こっちが泣きそうだ。
「激しく同意!」
手と前足を取り合って、ぴょこぴょこ跳ねる。
ひとしきりはしゃいだあと、聞きたかったことを尋ねた。
「マミちゃん、この世界にきてから、どうやって過ごしていたの?」
「こっちに飛ばされてすぐ、森で途方にくれてたところを、ジャスミンさんに助けてもらって」
私、助けられてばっかだね〜、と笑う。
「あ、ちょっと待って。これ、出しちゃうね」
濡れぶきんで手を拭いて、お料理をバスケットから出し並べながら、ケイトは言う。
「ジャスミンさんには、元の世界の事も話してるの。この世界のことを教えてもらったり、お店のお仕事もさせてもらって、最近は新メニューの開発も任せてもらったりして、楽しく過ごしてるよ」
し、か、も! と人差し指を立てて、くるくるまわる。
「いまの推しはねぇ、騎士隊の人なんだぁ。かっこいいの〜」
この世界でも、楽しそうで、何よりだ。
「もちろん、あっちの世界のケイトは殿堂入りだけどねっ!」
「相変わらずねぇ。変わりなく元気で嬉しいわ。ちなみに、私の推しはカーラなのよぉ」
「カーラさん! 私も大好き!」
「楽しそうなところ、お邪魔しても良い?」
「カーラ!」
「もちろんです!」
「ケイトさん、今日は無理言ってごめんなさいね。ありがとう」
「とんでもない! 今度のパーティのお料理候補、これで全部です!」
そう言って、テーブルの料理を手で示す。
「王族の方も、いらっしゃるんですよね……? 定番だけじゃなく、珍しいものもあったほうがお喜びになるかと思って、いろいろ試作してみました。お口に合うといいのですが」
「ちょっとケイトちゃん、よく見たらたこ焼きまであるじゃない!」
「あ、気づいたレフちゃん〜? にっしっし。蛸が手に入らなかったから、具は豚肉の腸詰なんだけどね〜。ソースは私こだわりの一級品なのよ!」
「じゃあ、それをいただこうかな」
カーラが、嬉しそうにお皿を差し出す。
ケイトは慣れた手つきでサーブする。
「はぁい、よろこんで!」
あれ、一瞬、ケイトちゃんの後ろに赤提灯が見えたような……?
あ、たこ焼きのとなりは蛸さんウインナー……。
あの卵料理、小さい旗が立ってるけど、ミニサイズのオムライスかしら……。
「うん、美味しそう! 美味しいって正義よね!」
前世からの先入観さえ、捨ててしまえば。
この世界の人々にとっては、珍しい美食の数々である。
レフは深く考えることを放棄して、懐かしい品々に舌鼓をうつことに決めた。
読んでくださり、ありがとうございます。
ブックマークありがとうございます!励みになります。
次回から後半に入ります。
どうぞ、よろしくお願いいたします。




