第10話 偶然
カーラ 公爵令嬢
レフ 転生者 琥珀狐 カーラの相棒
ロナルド(ロニー) カーラの兄
シーミオ カーラの母
ロイル カーラの父
ジャスミン 町の料理店の店主
ケイト 迷子
それは、森に入ろうとしたカーラの前に、突然現れた。
よく知っている気配が、渦を巻く。
暖かい金色の光が、少しずつ、薄れたあと。
現れたのは、レフではなかった。
「レフの、転移術…………!」
体の一部を消費するその術に、カーラは制限をかけていた。
どうしてもの時だけしか、使ってはいけないよ、と。
レフを祭り上げ、利用しようとする人たちから、守りたかったのも、一因だった。
力を知れば、求めてくる人間は、いつの時代もいるものだ。
しかして現れたのは、肩までの黒髪の少女。
少女の顔に、見覚えがあった。
「あなたは、ジャスミンさんのお店の…………」
カーラに気づいたケイトが、正座のまま、ピシッと背筋を伸ばした。
「はいっ! ケイトと申します!」
ケイトがはじめて狐のお嬢様にお会いしたとき、世界には、こんな美しい人がいるのかと思った。
お店で見た姿はワンピースだったけれど、パンツスタイルも格好よくて、長い脚が際立って。
今日はさらに、魅力的にみえた。
緊張と、カーラの美貌に胸を高鳴らしながら、頑張って息を吸う。
どう説明したら良いのかと、言葉を選びながら、ケイトは自分の身に起こった事を、話し出した。
「あの、私さっきまで、レフちゃんと、一緒にいてっ…………。迷子だって、話したから? わからないけど、気づいたら、私だけが、ここにいて…………」
黙って聞いているカーラを見上げて、問いかける。
「あの、これって、レフちゃんが助けてくれたんですよね。えっと、まずは、ありがとうございます」
恩人の主人である令嬢に、深く一礼した。
「すみません。ここにいるのが、私だけで。レフちゃん、なんで森にいたのかは、教えてくれなくて。いや、そもそもお話し、できないんですけど。でも名前だけは、教えてくれて」
「…………レフは、元気でしたか?」
怪我など、していなかっただろうか。
食事は、とれていたのだろうか。
カーラは穏やかな声で、問う。
「はい! ペグの実を、二人でいっぱい食べました!」
はじめて、クス、と笑うカーラ。
発言が子供っぽかったかな、とケイトは赤面する。
「ありがとう。あなたに会えてよかったわ」
ケイトの髪を優しく撫でて、カーラが笑う。
「この道から、来たのよね? 街までは、一本道だから」
落ちていたケイトの行李を拾って、こぼれた山菜を入れてくれる。
お嬢様にそんな事させてはいけないと、慌てて立とうとするけれど、足がもつれて転びかけて、カーラの胸を借りるという事態に。
さらに、迷惑をかけてしまった。
なんだか、良い匂いもするし。
対する自分のポンコツぶりが、疎ましい。
「ジャスミンさんによろしくね。私は、レフを追いかけるわ」
そう言って、手を振る。
真剣な顔も素敵だったけれど、笑った顔は、もっと素敵で。
ケイトは、たちまちカーラのファンになっていく自分を、自覚していた。
読んでくださり、ありがとうございます。
もうしばらく続きます。
どうぞ、よろしくお願いいたします。




