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第83話【ロギスとの情報交換】

 僕達はロギスの薦める食事処アジライに行き、ロギスが店員に話をすると直ぐに個室に案内された。


「よく利用されてるのですか?」


 店員の態度にリリスが尋ねる。


「まあな。

 今回みたいに個室で打ち合わせを兼ねて食事をする事が幾度かあったから顔くらいは憶えてるのだろう」


 実際は薬師ギルドの部門長クラスの人間を憶えておかない店員が居る店では客商売としてはなかなか厳しいのが本音だったのだが、ロギスはそのあたりはあまり気にしない性格だった。


「まあ、座るといい。好き嫌いが無いなら適当に店のオススメを頼むがいいか?」


「大丈夫ですよ。それでお願いします」


 僕がそう言うとロギスは店員を呼び止めていくつかの注文をすると「入るときは声をかけてくれ」と頼んでおいた。


「まあ、なんだ。

 かなり前にだが、重要な話をしている時に料理を運んできた事があってな。

 口止めをするのに少々面倒な事になったんだ」


 ロギスはため息をついてそう話す。


「まあ、そんな事はどうでもいいか……。

 それより今日の治療に関しての話をするとしよう」


 ロギスは話題を変えて今日の事についての話を始めた。


「今日の君の治療を見て改めて女神様の祝福が如何いかに規格外かを思い知らされたよ。

 君たちが別室へ移った後でロシュの両親からいくつか話を聞いたのだが、治療の許可のひとつに患者の心臓付近に手を添えるとか、ロシュはまだ子供だったからそこまで問題にならなかったが成人女性の場合はそうはいかないのではないか?」


「そうですね。

 実際にその説明が一番のハードルだったりしますよ。

 何で胸なのか? とか、手を握るとかじゃ駄目なのか? とかね」


 僕は今までにあった事例をいくつか取り上げて説明した。


「……一応、ギルドの方でも最低限の話は聞いていたがこうして実際に話をしていると話以上に厄介な能力なんだな。

 はたから聞くと女神様の祝福を悪用して女性の胸を触りまくるとんでもない奴に聞こえるからな」


 ロギスは半分呆れた顔でそう僕に言った。


「ナオキは治療中にそういった感情は起きないようで、私が側で助手をしている時も一度たりともニヤけたりする事は無かったですよ」


 ロギスの言葉を聞いたリリスがすぐさま僕のフォローに入った。


「ああ、すまない。

 一般論を言っただけで俺がそう思ってる訳じゃないんだ。

 だが、現実問題で結構大変なんだろ?」


「まあ、大変か? と聞かれればそうだと答えるけど、僕の治療を待っている患者がいるならばそのくらいは弊害とは思ってないさ」


 僕は苦笑いを見せながら手をひらひらさせた。


「ところで、君は薬師ギルドの薬師部門長だと言ってたけど、まだ相当若いよね?

 何か特殊な調薬か出来るとか理由でもあるのかい?」


 僕は疑問に思っていた事を聞いてみた。


「まあ、若造なのは自分でも分かってるつもりだ。

 俺の父親が前任者だったんだがのギルマスに代わった時に世代交代とか言って若い者達にトップを譲るように指示されたんだ。

 薬師部門の皆はかなり反発したけど最後は俺が引き継ぐ事を条件に渋々だが了承したんだ」


「引き継ぐって言っても君は相当若かったんじゃないか?」


「まあな。成人して直ぐだったから当時は15歳だな。

 あれから5年経ったから今は20歳だがまだ若造と言われても仕方ないがな」


「結構無茶な要求をするギルマスなんだな」


 僕が素直な感想を漏らすとロギスは「まあ、いろいろあるんだよ」とはぐらかした。


「それじゃあこれからも患者の情報を教えて貰えるんですね」


「まあ……そうだな。

 但し、条件……と言うか頼みがあるんだが……」


「何でしょうか?

 無理な事でなければ相談にのりますが……」


「全てとは言わないが、少なくとも俺が担当していた患者の治療に行くときは同行させて欲しいんだ」


「それは問題ないですから大丈夫ですけどロギスさんも忙しいのでは無いのですか?」


 僕の言葉にロギスは頷いて「出来るだけ調整をつけて同行出来るようにする」と答えた。


「でしたら問題ないかと思いますし、その方が患者さんも安心するかもしれないですからね」


 僕が了承すると横でリリスが何か言いたそうな表情でこちらを見ていたが『はぁ』と小さくため息をついて視線を外した。


「では、そちらにお願いする患者の情報を取りまとめておくようにしよう。

 こちらの話はそれだけだがそちらから何か聞きたい事があるか?」


 ロギスの言葉に「うーん」と唸る僕だったが、ふと思い出したようにある人物について聞きたいと思っていた。


「そうだ、薬師ギルドの化粧品部門長のゼアルさんについて聞きたい事があったんです」


「ゼアルの事?

 あいつが《《また》》何かやったのか?」


 話がゼアル話になるとロギスは苦い顔になる。


「《《また》》とは以前、何かやらかしたのですか?」


「ああ、身内の恥をさらすようで気が進まないが、彼は化粧品の調合が上手くて部門長に抜擢されたんだが、お店にくる若い女の子達に声をかけまくる……言い方を替えればナンパをよくするようになったんだ。

 あとは、まだ化粧品が必要のない未成年に化粧を薦めたりと現ギルマスのお気に入りだからとかなり自由にやっているようだ」


「そちらも世代交代で部門長にゼアルが抜擢されたのですか?」


「いや、化粧品部門は現ギルマスか着任してから新設したので彼が初代だな」


「そうですか。

 あっ、食事が出来上がったようですので先に頂きましょう。

 食べ終わったらもう少しだけ教えてください」


 と言った僕の言葉にロギスは頷きながら運ばれてきた料理をテーブルへと並べた。

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