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第132話【能力を過信し悪用した者の末路】

 ――カツンカツンカツン。


 誰かが地下牢の階段を降りてくる音が響く。


 地下牢の前で見張りをしていた牢屋番の二人はその人物を見てすぐさま敬礼の形をとり通路を開けた。


「女王陛下――今のところ特に異常はありません。罪人も暴れる事もなく大人しくしております」


 牢屋番の片方がそう報告すると彼女は片手を軽くあげて下がるように促した。


「はっ!」


 牢屋番の男達はすぐに牢屋の前から移動して部屋の隅で待機をする事にした。


「――さて、そこの占い師の男。

 そなたの命令でわたくしの命を狙った事は既に明白であり国を統べる王家への襲撃者として罪を償わせなければならないが何か申し開きはあるか?」


 女王陛下が牢屋の中にいるゴッツァイを見下ろしながら話しかける。


「一体なにを言われているのかさっぱり分からないな。

 大体がいきなりこんなところへ連れてこられて一方的に人を罪人扱いされるとは女王陛下ともあろう方がやって良い事ではないぞ」


 ゴッツァイは嫌味な顔をしながら女王に向かって恨み節を返す。


「ほう、全く知らないと申すか。

 では、なぜそなたは朝一番の時間帯に町を出る馬車の積み荷の中に居たのか説明をして貰えるかな?」


「その事ならば俺様は被害者である筈だ。

 あれは俺様が酒を飲んで酔った隙に樽に押し込めて誘拐をされるところだったんだ」


「ほう。誘拐とな?

 では、その犯人達はそなたを誘拐してどうするつもりだったのだろうか?」


「そこまでは知らねぇが、俺様の噂を聞いた他の国が画策してやったんじゃないのか?

 あの御者を問い詰めれば分かる事だろ?」


(もちろん、そんな訳は無いがあの御者には万が一俺様が捕まった時には自分が誘拐して他国に売り飛ばすつもりだったと言うように指示をしていたからな。

 俺様の洗脳が深い奴らはとにかく俺様を守る発言しか出来ないようにしてあるから証拠など出るはずがないさ)


 証拠は見つからないとタカを食うゴッツァイは女王陛下に対しても傲慢(ごうまん)な態度を取るが女王もその程度ではキレる事なく淡々と証拠を突きつけていく。


「ふむ。そなたが連れ去られたと主張する馬車の中にはそなたの持ち物である金目のものが多数積んであったがあれはどうしてなのだ?」


「あれは、俺様を誘拐した時に俺様の屋敷にあった金目の物を根こそぎ奪っていっただけにすぎないだろう?

 それよりも、神告(しんこく)の代行者である俺様をこんな所に押し込めてタダではすまないぞ。

 この国の未来を予測出来る俺様の機嫌を損ねるというのならば他の国へ行ってこの国の弱点をふれまわってやる事になるぜ」


「ふむ。そうか、それは確かに困るな。

 であれば尚更そなたを解放する訳にはいかないな」


 女王の言葉に悪態をつきながらも彼女の隙をつくるためにゴッツァイは賭けに出た。


「――なあ、取引をしないか?」


「取引だと? 今のそなたにそのような権利があると思うのか?」


「まあ、聞けよ。

 今から俺様があんたの未来を見てやるから俺様の前にしゃがんで目を見せてみろ。

 俺様の未来視は100%の確率で当たる神の目だ。

 その目でこの国の行く末がどうなるのかを占ってやるよ」


「ほう、それは面白い事を言う。

 では、ひとつ見て貰おうか。

 きっとそなたを断罪する未来が見える事だろう」


 女王はそう言うと牢屋の中に居るゴッツァイの前で腰を落としてしゃがみこんだ。


「よし、どちらの未来が正しいか占ってやろう」


(ふん。わざわざもう一度殺されに来やがって、首を落とされて死ぬがいい!)


 ゴッツァイは洗脳している牢屋番の男に占いをするかのような素振りで指示を出した。


「――やあっ!」


 突然牢屋番の男の一人が腰の剣を抜くと女王の首をめがけて振り下ろした。


 ――キンッ!


「なっ!?」


 剣を弾く音が牢屋内に響き驚愕(きょうがく)の声がゴッツァイから漏れる。


「ふむ。まだそなたの洗脳者が残っておったか。

 城の者達はあらかた調べたと思っておったが、そなたの洗脳力はなかなかどうして大したものだ。

 私の調査をすり抜ける者がいたとは正直驚いたよ。

 だが……」


 女王に振り下ろされた剣は彼女が袖の下に隠した防具に受け止められ彼女に届くことなく弾かれその反動で斬りつけた男は尻もちをついていた。


 立ち上がった女王はその男を見下ろしたままスキルを使う。


「控えよ!!」


 女王の魔力威圧スキルが発動すると剣を向けた男は泡を吐きながら気絶をした。


 牢屋の中ではゴッツァイが腰を抜かして少しでも離れようと床を這いながら後ずさりをしていた。


「――しかし、これでそなたの罪は確定だな。この状況では到底言い逃れは出来まい。

 おってそなたには死罪を申し付ける。

 今までの行いを思い起こして最後の時まで反省するがよい」


「なっなんだと!? 神の代行者である俺様を裁くというのか?

 神をも恐れぬ(ばち)あたりめが!」


 ゴッツァイが女王に向かって叫ぶが女王は冷たい目を向けて「そなたは何もかもやり過ぎたのだよ。おとなしく自分の能力(ちから)に見合う生活をしていればそれなりに良い目をみれていただろうに、欲を出し過ぎたな」と告げてその場にのびている男の処理を指示すると上へと登って行った。


「クソがぁ!!」


 女王の去った地下牢では打つ手の無くなったゴッツァイが壁を殴りながら叫んでいた。


 ――その後、王都で彼の姿を見た者は居なかった。

 それが神の能力(スキル)を自分の利益だけに好き勝手していた男の末路だった。

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