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第112話【特別な立場と王都へ出発】

「強い娘ね。

 あれだけはっきりと断られたと言うのにまだ諦めてないのには怒りよりも称賛が勝りそうよ。

 もう私と婚姻を結んだナオキと一緒になるには私が『ナオキと離婚』するか『ナオキが特別な立場』になるしかないのにね」


 リリスの口から『離婚』の言葉が出た事に困惑する僕は彼女にそれとなく確認する。


「えっ?

 もしかしてリリスは僕と婚姻を結んだ事を後悔してる?」


 その言葉を聞いたリリスは目を丸くした後で笑いながら答えてくれた。


「そんな事ある訳ないでしょ?

 初めからあれだけアプローチしてた私を頑なに拒んでいたのは誰でしたっけ?」


 リリスはそう言うと僕の手を両手で握り「やっと叶った願いを容易く手放す事はあり得ないわよ」とウインクをして自分の胸へと押し付けた。


「リ、リリス。

 こんな所でそういった行為は夫婦といえどもやるものじゃないぞ」


「えへへ、ごめんね。

 ナナリーさんとの事でちょっとだけヤキモチを焼いていただけよ」


 リリスはそう言うとパッと手を離して意地悪く笑った。


「――なあ、さっき言ってた『特別な立場』って何なんだ?」


 集合場所に歩いて向かうすがらにふとリリスの言っていた事が気になって聞いてみた。


「ああ、あれは王族や貴族など『子孫を残す事が使命のひとつである一族』の特権で、それらの地位にある人にはこの国の一夫一妻制度が適用されないのよ。

 まあ、国が勝手に決めた法律だけどそれで国民が困る事は無いから上流階級同士で好きにやってください的な扱いになってるみたいね。

 まあ、平民の私達には関係のない話なんだけどね」


「へー、この世界ではそんなルールなんだね。

 僕が居た世界でも国によって一夫一妻制の国と一夫多妻制の国があったからそんな感じなのかな……」


「そう言えばナオキは神様がこの国に連れてきた『女神の祝福者』だったよね。

 婚姻の儀を結べたのが嬉しくて忘れていたけど良く考えたら私みたいな平民が女神の祝福者(ナオキ)と結婚して良かったのかな?

 王都に行ったら王女様とかがナオキを私から取り上げたりしないかな?」


 急に不安になったリリスがそう呟く。


「心配しなくても大丈夫だよ。

 そんな夢みたいな展開なんてある筈がないじゃないか」


 僕がそう言うと「そうね。そうよね」と自分に言い聞かせながら頷くリリスを愛おしく感じながらそっと手を繋いだ。


   *   *   *


「――お待たせしました」


 待ちあわせ場に着いた僕達は荷物の確認をしていたガリウムに声をかける。


「おお、お待ちしていましたよ。

 もうすぐ出発となりますので2番の馬車へお乗りください。

 自分は1番馬車の御者を兼務しておりますので何かあれば休憩時にでもお知らせ頂ければと思います」


 ガリウムにそう言われた僕達は指示のとおり2番馬車へと向かう。

 今回の商隊は馬車5台が連なる編成でそれぞれに1人の御者と護衛が付く事になっていた。


「5台の馬車に10人の御者と護衛か……。

 人の食料だけでも結構必要だろうけど馬の食料とかはどうするんだろうか?」


 ふと、気になって同乗する御者の男性に聞いてみた。


「ある程度は積荷として準備してありますが水は途中の沢で、飼い葉は2〜5日の距離に点在している町や村で確保する予定になってますね。

 それは馬だけでなく私達も同じで必要最小限しか積荷として乗せられないのでそうしています」


 確かに食料などを満載していたら商売の積荷を削らなければならないのでそのやり方は必然なのだろう。


「準備が出来ましたので出発をしたいと思いますがよろしいですかな?」


 ガリウムが出発の最終確認をしてきたので「はい。お願いします」と答えて馬車へと乗り込んだ。


「よし! 出発!

 まずはこのまま西へ進み、領地境の町ザザールへ向かう。

 到着予定は2日後だ」


「了解しました」


 こうして僕達はガリウムの率いる商隊と共に王都へ向けてバグーダの町を出発した。


   *   *   *


「よし、今日はここで野営をするぞ。いつもの割り振りで準備を進めてくれ」


 バグーダの町を出発したのが昼前だった事もあり、それほど進んだ感じはしなかったがガリウムの指示で野営の場所が決まった。


 話を聞くと道沿いの水場がこの辺りを過ぎると暫く無い事と、馬車を5台も停められる広場が少ない事が理由と言われた。


 護衛達も王都から連れてきたメンバーとの事で僕達以外は野営時にどう行動すれば良いかが決まっているらしく皆テキパキと準備をしていた。


「では、夕食としますかな」


 商隊の食事は質素な保存食が中心で簡易的なかまどを使って沸かしたお湯でスープをつくりパンと一緒に摂っていた。


「あなた達は自分で食事の準備をしていると聞いたけど大丈夫なの?」


 同じ馬車に同乗していた護衛の女性マリルが僕達を気づかって声を掛けてくる。


 今回の護衛5名中、2名が女性で2と3の馬車に女性護衛が割り当てられていたが、リリスが居るのと中程の隊列であることからそうしたと聞いていた。


「ああ、ご心配をかけましたね。

 僕達もこれから食事にしますのでお構いなく」


 僕はそう答えると収納魔法から町の食堂で作って貰った食事を2人前ほど取出して同じく収納魔法から出した簡易的なテーブルの上に並べた。


「ええっ!? それ、何処から出したのよ?」


 マリルは突然現れたテーブルセットと温かい調理済の食事に目を剥いて驚いた。


「あっ、ガリウムさんには話していたけれどその他の皆さんには説明していなかったですねってガリウムさんから何か説明的なものはありませんでしたか?」


 僕はガリウムの方を向いて確認の視線を送る。


「ああ、すまない。

 御者の4人には荷物が予定と違う事を説明する際に話したが護衛には説明をしていなかったよ。

 あまり多くの人に話して欲しく無いように感じたのでね」


「確かにそうですね。ご配慮ありがとうございます。

 ですが、もう見せてしまったのでごの方々にも説明しておきますね。

 あ、当然ながらここにいる方々以外には他言無用でお願いしますね」


 僕はそう言いながら収納魔法が使える事を説明した。

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