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第101話【閑話 ナナリーの助手奮闘録①】

 これはリリスがアーリーから受付嬢の育成依頼を打診される少し前からのナナリー主観のお話になりますので話が重複する場面もありますがご了承ください。

「ナナリー、ちょっと話があるからこっちに来て座りなさい」


 いつものように案内嬢の仕事を終えた私が帰宅すると母アーリーから呼びつけられた。


(今日は特に職場で失敗とかはしてないはずだし、怒られる内容にも心当たりは無いわよね)


 大体このタイミングで母親に呼ばれる時は何かヘマをして怒られる事が多かったので慌てて今日の記憶を辿るがそれらしき事が思い当たらない。


「はい、すぐに行きます」


 なぜ呼ばれたのか分からないまま、私は着替えもせずに母親の前の椅子に座る。


 ナナリーが椅子に座るとアーリーは書類を広げて話しだした。


「今度、斡旋ギルドの2番手受付嬢が結婚で別の部門に異動になるの。

 それでその穴埋めに3番手受付嬢が繰り上がるんだけど今度はその3番手受付嬢の席が空くのよ。

 本当ならばあなたをねじ込みたいんだけど、まだ資格も取らせていないし案内所との契約もあるから今回は見送ることになるわ。

 それでギルド内で唯一3級資格を持つ職員を充てようと思ったけど面接をしてみると思ったよりも『残念』な娘だったのよ」


 アーリーは手元の資料を見ながら苦い顔をする。


「それで、私が受けない事とその事がどう関係するのですか?」


「ギルマスとしてはもう少しちゃんとした娘を出したいから教育研修をしなくてはならないの。

 でも、そんなに短期間で身につくほど簡単なものでない事はあなたも分かってるでしょ?」


「まあ、それは分かりますけど……」


「だから、助っ人を呼ぼうと思ってね」


「助っ人……ですか? 一体誰を……?」


「居るじゃない? 良く知ってる1級受付嬢の資格を持った人が……」


「良く知ってる……って、まさかリリスさんですか!?」


「ええ、彼女ならば窓口業務をしながらでも研修をやれるはずだから今回の件は適任ね」


「でも、リリスさんはナオキ様の助手をしていて依頼を受ける暇はないと思うのですが……」


「だからあなたを呼んだのよ。

 彼女がうちで研修講師をしている間はあなたが彼の助手を務めれば問題ないわ。

 ああ、案内所の方は私が説明して人員の手配をしておくからそっちは気にしないで良いわよ」


 アーリーは紅茶を一口飲むとナナリーに「どう? やってくれるかしら」と言った。


「……リリスさんが依頼を受ける前提の話ですよね?」


「もちろんそうだけど、大丈夫よ必ず彼女は引き受けてくれるから」


 アーリーの自信はどこから来るのか分からないが、彼女がそう言うならば何かしら手立てがあるのだろう。

 元々、彼と一緒に仕事をしてみたかった私は「分かりました」と了承をした。


(ナオキ様と一緒に仕事が出来る……)


 部屋に戻った私は服を着替えてから案内所での仕事引き続きをするための書類を記入していく。


 いくらアーリー(母親)が手を回すと言っても仕事の引き継ぎも無く、いきなり暫く休むとなれば迷惑もかかるし私自身の周りからの評価も悪くなる事は容易に想像出来るのでその辺はしっかりとしておかなければならない。


「このくらいで大丈夫だと思うけど……」


 書き上げた書類を見直しながら私は明日からの事を考えて胸が高鳴るのを感じていた。


 ――次の日の夕方、案内所で仕事の引き継ぎを済ませた私を待っていたのは笑みを浮かべた母親の姿だった。


「ナナリー、こっちの方は予定どおり依頼を受けて貰ったわよ。

 あなたは明日から彼の助手として薬師ギルドの担当者と共に訪問治療に行って貰う事になるわ。

 出来る事ならばこのチャンスに彼をものに出来ると嬉しいんだけどね」


 アーリーはそうナナリーに告げると「頑張ってやりなさい」と送り出した。


   *   *   *



 リリスは交渉が終わった後、夕食を摂りながらふたりで明日からの事を話し合っていた。


「とりあえず2週間ほど斡旋ギルドに行って、向こうが選んだ受付嬢候補の娘に基礎を叩き込んで第三番窓口の担当が出来るように仕込んでくるわね。

 で、ナオキの治療補助については……」


 リリスがそう言いながら隣で黙々と食事を食べる私を見てまた、ため息をついた。


「まあ、あの条件ですぐに差し出せる人材といえばあなたしか居ないわよね……。

 どうこう言っても始まらないからとりあえず私が気をつけている事や明日からの患者さんの情報を教えるから今日はこの宿に泊まりなさい。

 簡単に考えてたらナオキに迷惑ばかりかかるだけでなくて患者さんにも迷惑がかかる事をしっかりと肝に銘じて真剣にやってね」


 私はリリスの言葉に食べる手を止めてコクコクと頷いた。


「まあ、僕の方は毎日2〜3人くらいだしロギスさんも同行する事が多いから多分大丈夫なんじゃないかな?

 もちろん今までリリスが居てくれたからスムーズにいってたのは十分理解してるつもりだけどね」


「母が無茶を言ってすみません。

 私が受付嬢の資格を持っていれば話は早かったのでしょうけど、まだまだあと2〜3年は今の案内所で経験を積むように言われてるので今回は『せめてリリスさんの代わりにナオキ様の手助けをしなさい』と言いつけられて来たのです」


 私は申し訳ないといった感じで頭を下げながら説明を受ける。


「出来るだけ早く仕事を叩き込んでくるから無理をしないようにしてね。

 何かトラブルがあったら斡旋ギルドに居るからすぐに連絡してくださいね」


 リリスはそう言うと自分の手帳から必要な情報をメモに書き写して私に渡してきた。


「じゃあ、とりあえず明日からお願いするわね」


「私も同じ部屋に泊まって良いんですか?」


「あなたは隣の部屋を取ったでしょ!」


「あははは。やっぱりそうですよね。明日の準備をして寝るようにします」


 私はそう言うと自分の借りた部屋に入っていった。

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