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会合


 この世界は、現世と同じで幾つもの国があり都がある。

 

 私たちが住む「逃幻京」は遊郭を生業とする国で、「花」の一族が収める桃花(とうか)の邑を中心に

「七」の一族が|"#卯李七"《ういな》。「暁」の一族が|"暁月"《あかつき》。「杏」の一族が|"龍杏"《ろうあん》。そして、私達「ノ」の一族が|"玉ノ与"《たまのよ》。


 その5つの都から最も高貴な太夫たちが集まり、更なる国の発展を望み話し合う場が会合だ。




 ガチャ ―――






「到着いたしました」


「どうぞ、有意義なお時間をお過ごしくださいませ」






 朧車から出れば、目に付きたくなくとも大きなお屋敷見える。

 すでに帰りたくなった心はそっと隠し、私は、既に皆が集まっているであろう庭園へと向かった。











*

*

*











「おぉッ!!!要約来たかァ!!!」


「お主はどんだけ待たせるじゃァ!!!」




 庭園に着けば、やはり用意された私の席だけが空いていた。


 私の姿を見るなり、早々に話しかけてきた綺麗な顔立ちの男。

 その顔とは裏腹に、ガハハとガサツに笑うは、暁月が太夫鬼の暁灯(ぎょうてい)

 

 暁灯は、立ち上がり、その背に似合った大きな手で來ノの頭を捏ねくり回す。







「...待たせるだなんて、」


「少々身支度に手間が掛かりましたが」


「時間にはぴったりですよ」




「ハッ、だがァその身支度も無駄だったようだァ。來ノよ」




 暁灯とは対照的に、クククと声を抑えて笑うは、龍杏が太夫 人魚の杏樹(あんじゅ)

 女性にも負けない滑らかな銀髪をかきあげて、足を組む姿は実に妖艶。きっと老若男女目を引くだろう。






「えぇ...そのようで」




「ククク素直な奴よのォ」


「まァ早よう座れ。菓子もあるぞォ」




「...杏樹様が御用されたわけではないのに」


「なんて恩着せがましいお人なのかしら」




「遠慮なくバクバク食ぅとるお主に」


「言われたくはないのォクモよォ」






 杏樹にそう言われながらも、また一つ、また一つと菓子を口に入れる。

卯李七が太夫、女郎蜘蛛の妃尚七(ひさな)


 綿毛のようにふわふわした髪は嬉しそうに踊り、まるで、飲むように食べる姿は童のようなだが、彼女は正真正銘の成人女性だ。




 そして、もう一人。

 柔らかそうな物腰に金色の耳を立て、揚々に九本の尻尾を振っては、笑顔を絶やさない男。






「まァまァ皆さん落ち着いて」


「全員揃いましたし、そろそろ始めましょうかァ」




「―――...皇子様」


「帝国の光輝に敬意を払い、謹んでご挨拶申し上げます」


「この度はお招きいただきありがとうございます」






 來ノは、皇子様と呼んだその男にそう言うと、ふわりと裾を広げ持ち、腰を落とすように頭を下げる。


 九尾の花繚(かりょう)。桃花を収める花の一族が太夫。

 つまり、この国を背負う皇帝になることを約束された男だ。


 花繚は、依然に嬉しそう立ち上がると、手を広げ歓迎の言葉を述べた。






「皆よく来てくれた」


「また、皆の顔をみることができて実に嬉しい」


「それじゃァ我が国のさらなる光輝を願い、











「会合を始めよう!」






 野心にまみれた集いが、今、始まった。




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