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16年




 どこに居ても時の流れとは早いもので、私も気がつけば16歳になっていた。






「つまり、ここに転生して16年」






 腰ほどに伸びた支子色(くちなしいろ)の髪を結い、手馴れた手つきで着物を着る自分の姿は自他共にすっかり板についたと思う。




 コンコン ―――






「來ノ様」


「準備は出来ましたか?」






 部屋の外からの問いかけに、もう一度、鏡の前で身なりを確認して、浮かない顔を紅で引き締める。


「今行きます」と平然を装った声で部屋を出れば、外へを足を急かした。











*

*

*











 屋敷の前には、すでにこの世界での移動手段の朧車が到着していた。

 

 それを囲う護衛達。

 その中の一人は私を見るなりチッと隠すことなく舌打ちし、近づいてきた。

 





「遅い」


「遅刻してェのか」






 青い髪の彼は、威嚇するように髪色と同じ青い翼逆立てる。

 

 彼は、"ノの一族"が番人、烏天狗の蒼ノ(そらの)

 今日みたいな日は、頭の彼が側近で私を護衛をしてくれる。







「まったく何をめかし込んで」




「はいはい」


「ごめんごめん」


「速く行こう行こう」




「っち、...出発だ!!!」






 蒼ノの声で動き出す朧車。

 

 変わらずしわをよせながら、ドスンと來ノの向かいに座る。






「めんどくさいわね」




「あぁ」






 私達は、逃幻京を収める五族が集まり開かれる、会合に向かう為、中心部「花」の一族が収める都|"桃花"《とうか》に向かっている。



 だが、今朝から憂鬱な気分が晴れることはなく、むしろ、より一層に華やかになっていく景色と比例して落ちていくばかりだ。






「來ノ。ばば様から伝言だ」



「何が合っても、何を言われても」


「慌てず騒がずに目立つな」




「...分かってるわよ」


「そんな気も更々ないわ」




「ふっそれもそうだよなァ」


「じゃァ、俺からもう一つ ―――





















「俺から離れるな」






 握られた手から伝わる気持ちはとても熱く重い。

 來ノは、嬉しさと、申し訳なさが混じった何ともいえない感情から握り返すのを躊躇する。


 だが、蒼ノはもう一度舌打ちを鳴らせば、握る手を引き寄せて、自身の胸に來ノを抱きとめた。


 トクントクン。蒼ノの鼓動が近い。






「...返事は?」




「ふふ、分かってるわ」


「もう強引なんだから」




「うるせぇ」






 クスクスと今日はじめて笑った來ノ。

 それを見て、蒼ノは愛おしいそうに目を細めた。




 ――― 桃花の都は目の前だ。




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