弱点を突かれたデュラハン
「グヌヌヌヌ……」
最後に宝箱なんか持ち出してくるな! やっぱり来るんじゃなかった。そもそも、なんのために来たのだろうか。
「どうず、お納めください」
「……」
うわ、これって絶対に開けないとダメな奴じゃん。見えない色んな力を感じるぞ……。
「ヌヌヌヌ……爆弾ではないだろうなヌヌヌ」
洞窟内で爆発すれば、全員瓦礫の下に埋まってしまうぞ。
宝箱を色んな角度から何度も見る。そっと浮かして足が生えていないかも確認する。宝箱は汗をかいていないが、逆に私がビッショリ汗をかいている……。
「デュラハンさんて、見た目以上に臆病なんだな」
「ああ。さっきから『ヌヌヌヌ』言ってばかりだ」
「――聞こえているぞ! 慎重と言ってくれ。こっちにはこっちの事情があるのだ」
KYだ! 空気読めないのとは違うぞ! 危険予知の略なのだぞ――!
冷や汗をダラダラ流しながら、決死の覚悟をして宝箱を開いた。
ガチャ。
素早く遠のき耳に指を突っ込んだり鼻と摘まんだりして罠に備える――。が、何も起こらない……。宝箱を開けるまでに数十分を要したのは内緒だ。
安心感と期待を裏切られた感とで安堵の息がこぼれた。心の片隅では派手な爆弾の罠を期待していた。
「ほはあー……」
宝箱の中を覗くと、札束が一つ入っている。百万円の札束って……。
「これは金庫か! 現金はもっと目立たないところへ隠せと助言したいぞ」
普通は宝箱に現ナマを入れておくはずがない!
「命あってのお金ですから」
「どうず、お納めください」
どうぞって言え。
「……笑止! 盗賊から金を奪えば、やっていることはお前達盗賊と同じだ」
桃太郎と同じだ。桃太郎って鬼を退治するから……「鬼滅の刀」と同じだ……。冷や汗が出る。人気に乗っかりたくて……。
宝箱の蓋をそっと閉めた。バタン。
「金など要らぬ。金は自らの労力に対して貰えてこそ嬉しいものだ」
奪ったり宝箱から得るものではない。貰えて当然なものでもない――お年玉も同じだと言いたい――。冷や汗が出る。
「さすがデュラハン様だ!」
「やっぱカッコイイ!」
フッ。当然だ。
「うまくいきましたね、お頭」
「……」
だから、聞こえないところで言えっ! そっと宝箱の蓋を閉じた。バタン。
「ちゅどーん!」
「うわっお! ビックリした! もう、やめてよ~」
女盗賊が口で爆発音を言い、マジでビックリしてしまった――。ガチで腹立つ~!
「クスクス」
「クスクス笑うな! ぶった切るぞ!」
まったく……命知らずどもめ……。
あー。しばらく宝箱は見たくもない。トラウマだ。
洞窟を出ると、空にはオリオン座が見えていた。
魔王城ほどではないが、この辺りも寒い……さて……どうやって帰ろうかと思った時、目の前がグニャリと歪んだかと思うと、風景が荒れた荒野から魔王城玉座の間へと移り変わった。
「……」
――強制瞬間移動? 一瞬の出来事に酔いそうだぞ……。
「どうであった、人間達も予と同じ考えであっただろう」
「ま、魔王様!」
振り返ると玉座に座った魔王様のお姿が……もうパジャマ姿だ。
「このウェアラブルメガネは本物だったのですか」
であれば、ずっと見えていたのですね。ずっと手で握って歩いていた風景とかが……揺れて見えるから気持ち悪かったかもしれない。
「いいや。そろそろ眠くなってきたから引き戻しただけだ。フアーア!」
玉座で大きなあくびをされる魔王様。
「……」
ウェアラブルメガネをもう一度よく見る。……やっぱり、これはただの百均の老眼鏡じゃないか――!
ただなんだか百円なんだか……。
「魔王様がおっしゃっていた通り、勇者は宝箱を欲しておりました」
罠は要らぬと贅沢を申しておりました。
「であろう! やはり予が正しかったであろう」
正しかったというか……そりゃそうだというか……微妙です。
「そして、宝箱の中には綺麗なドレスとネックレスとコッペパンを入れといて欲しいそうです」
「ドレスとネックレスって……戦いにぜんぜん関係ないではないか。防御力は1も上がらぬぞよ」
「さようでございます」
ただ欲しい物を言ってみただけと思われます。ちゃっかりしています。
「さらにはコッペパンって……またカビが生えてメロンパンみたいになり悪臭を放つぞよ」
「――はっ! そうなれば、またしても宝箱点検の時に苦労します!」
嫌だ。異臭を放つ宝箱は……匂いが取れない。プリーズファブリーズだ! 冷や汗が出る。
「ハッハッハ。またしても女勇者にしてやられたな、デュラハンよ」
「ハッハッハ。ええ。そうですね。でも、してやられたのは魔王様です。ハッハッハ」
女勇者の意見を聞いてこいと言ったのは魔王様ですから。
「違うもん。デュラハンだもん」
「魔王様でございます。悔しければコッペパンを宝箱へお入れください」
あの腐敗臭をまた嗅ぐことになるのです~! 私には鼻は無いのです。
「もう入れといたぞよ」
……んん~? 過去形――!
「食べきれない分をこっそり入れておき、お腹が空いたら食べるんだもん」
「もんって……」
そんなことをしていたら絶対に食べ忘れるパンがあるはず……。
ということは、腐ったパンもやっぱり魔王様の仕業だったのではないか――! 食べ残したパンを宝箱に入れるなんて……常温フードストッカーかっ!
さすが魔王様と称賛すべきかっ! ……ガクッ。
――魔王様、やはり魔王城の宝箱はすべて撤去してください――!
今すぐ~!
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