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この男は本当に癒しを仕事にしている人間なのか! ~健康処楓4~

腕を捕まれ、背中を反らされた状態では苦悶の表情を浮かべることだろう、しかも腕はVの角度、これは痛い。地域の掲示板に貼られていたお知らせがふと目についた、視線を少し上にすると、技をかけている方は見知った顔であった。

白衣姿の幸洋(コウヨウ)だったからである。

「こんにちは」

「おう!来たか」

岩彰(いわあき)が健康処 楓の玄関で挨拶すると、同級生虎児が出てきた。

「はい、これ」

どのぐらい運動しているのか、消費したのか管理しているものを渡す。大体目安としては一日500キロカロリー活動で消費することとしている。

「でも心拍数も見るのね」

「それ見ないとどのぐらい負荷がきいているかわからないじゃんか」

そこを知らなかったために岩彰は安静時の脈拍数のまま歩いていた。

「それじゃあ、足りないから」

そういって目安はここなどと、そして実際に動いてみて、どのぐらい疲れが残っていたのか確認しながらというやり方を取っていた。

「そういえばあのポスターってなんなの?」

「おっ、見たのか、あれはご近所プロレスだな」

「えー何それ」

「ガキの時はプロレスの団体が来ていたけども、そこが来なくなってもう何年だから、近所のプロレス好きがやろう!っていいだしたんだよ」

「それでなんで先生が」

「それがな、元々は近所のお医者さんたちと、救護として呼ばれたんだ」

「まさか!」

「わかるがそっちじゃないんだな」

数年前、臨場感がほしいということで、リングアナを頼んだ。

「その人が途中で腰をやったんだよ、大きな声出して、はずしたんだよな、そんな時に颯爽と先生がやってきたんだよ、格好良かったぜ」

幸洋はリングアナを羽交い締めした後に、肩を入れるストレッチ(これはあまり痛くない)そこからの固くなった背中をゴリっと流して。

「ギャァァァァァァ」

会場内に響き渡った。

「この後何事もなくリングアナは実況したんだよ、そのリングアナ推薦ってやつだな、先生はリングに上がらないのかって」

プロレス技に詳しいリングアナが、先生の技は並みの技ではなかったといったことで、実行委員会はその意見を採用し、先生に正式にオファーが届いた。

「じゃあ、ちょっと足の指のマッサージするから、お湯で足を温めている間に俺がおすすめする先生の初試合ダイジェストで見るといいぞ」

この時岩彰は思った。虎児も幸洋先生と同類だからこそ、ここで上手くいっているのだと……

『この男は本当に癒しを仕事にしている人間なのか、地獄からやって来たのではないのか!』

「その言い方!」

『腰はあれから一度も悪くなってません、ありがとうヘルニヤ(地獄笑)先生、対しましては最強の胃腸虚弱「ストマック田中」の入場です』

審判が握手をするように促すが、そこで先生はやらかした。

「ギャァァァァァァ」

「今のは手にある胃のツボを押したようですね」

「やはり先生は試合が始まるまで待てなかったようです」

ここで観客たちは盛り上がる。

「花火は上がっていると思ったから、何かやっているとは思ったけども……」

「さすがにプロレスっては思わなかったろ、はい、足拭くぞ、最近はどうだ?」

「まだ慣れないのか、次の日足が辛いときあるわね」

「血行はよくするが、足の指のストレッチもやった方がいいな、指に力いれてみ?、薬指と小指な、あんまり使えてないみたいだからな」

ワァァァァァァ

説明を受けている間にも、試合は進んでいく。

「先生ドロップキックしてたわ」

「ドロップキックはいつでも出来るようにしておけは名言だと思うよ、あ~俺もそのうち出てぇ、ああ、ポスターは見たとは思うが、実は名勝負はあの次の試合なんだわ」

次の試合は、幸洋の師匠黄藤(きふじ)が選手として出場、幸洋の師匠といっても、幸洋は結婚することになってから指示したので年齢は近い。

「コウヨウ先生と同じように背中反らしVを決めたんだ、けどもこの時な!」

『幸洋くん!あの技は君の技は本当に素晴らしい!リスペクト故に私もこの技にしてみた』

しかしそこからだ。

『けども私ならあそこから二ミリ締め上げる!』

「ギャァァァァァァ」

「その時歓声も悲鳴に負けないぐらい飛んだんだぜ!」

「うわぁ、本当に何そのイベント」

「先生が入場するサイドはすぐに売れちまうんだぜ」

生で観戦する場合は、選手から技をかけられることもあります、不健康な方は要項をよくお読みになって、同意の上チケットをお買い求めください。


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