苦笑いで久しぶり
(どうせ自分なんか…)
ネガティブをこじらせているそこのあなた!
「この辺りから魔が差した者の気配がする」
花信風幸洋が察してきちゃうの!
目があった瞬間。
「姿勢がまず前のめりだね」
「えっ?」
腕を後ろに回されて、ホールド。
(痛っ)
「はい、吸って」
「えっ?えっ?」
「ほら、意識して吸って~吐いて~そこからの」
ギュ!
肩凝りに効くポーズ(花信風支えあり)
ファンからすると、芸術的と言えるこのポーズ、そしてこの後が真骨頂でもある。
スッ
幸洋が手を離しても、そのポーズは維持されたままだ。
ワンダフル、そんな声と拍手がパチパチと鳴り響くこと間違いなし!
しかし、そこからの脱力のはぁ~
五秒経過…
(あれ?)
俺は一体何を、何故にこんなポーズを、いや、待て、さっきのあれはなんなんだろう?
幸洋の姿は見えないこともあり、健康処楓を知らないこの人からすると、不審者?いや妖怪にあったみたいなもんであろう。
「さっき○○町の辺りを歩いていたら、肩凝りとストレス無くなったんだが」
そんなスレが立っていたら、どうせあの先生だろうと思うのか、それとも先生に伝説がまたひとつ増えていると思うのか。
「うちの親父って昔からそうなんですか?」
一度息子の青葉が、幸洋とは学生時代からの付き合いだが、最近よく話すようになった友人が訪ねてきたときに聞いてみたところ。
「う~ん、そういうタイプではなかったよ」
「えっ?」
「どっちかっていうと真面目で、最近話すようになったきっかけも、歩いていたら、前に歩いていた人を後ろからすごいスピードで追いかけてきた幸洋がいきなり寝技かけて、最初幸洋だってわからないで、そこで普通にあっ、久しぶりって声かけてくるから、苦笑いで久しぶりって言うしかなかった」
「親父との付き合いやめたくなったら、いつでも俺にいってください」
そういうと友人は笑って。
「大丈夫、それは考えてない」
「無理してませんか?」
「無理か、無理ね…いやしてないかな、幸洋ってこういうやつだったのかって、学生時代もう少し話していたら良かったなって思ったぐらいだよ」
彼は懐かしく思い出しているが、青葉の視界の隅には親父が作った芸術品、後五分間キープの人たちがいたので、こんなところでしみじみ語れるこの人も、やはり父の友人なのだなと思うのである。




