これは憎しみではなく愛である~健康処楓3~
「オヤジ、これ届いてる」
「おお、ありがとう」
青葉は、父の幸洋あてに届いた封書を渡した。
ぺらり
「…今日は虎児くんのバイトはないかな」
これから母親の女性客が来るようなので、青葉も家を空けることにした。ちょうどいいので虎児も誘ってどっかの食べに行くことにしようと、連絡をつけたところ。
「君は楓の、先生の息子さんだよね?」
「どうもお世話になってます」
こちらは知らない顔だが、挨拶はする。
「お父さん、元気かな?」
「っていうことがさっきあった、顔を覚えてなかったのはうちに来ていたのは大分前だったようだし」
「でもすごいな、その人は今も先生のことを覚えているんだな」
「いや、あれはただのドM」
「言い方!」
この作品は幅広い年齢層がご覧になってます。
「え~だってそういうのしかないじゃん、刺激を求めるためにうちに来てるタイプなんで」
「それはMだな」
「そうして、そのいい年した人が、オヤジの話を聞きたがるので、なんか途中でうんざりしてさ、それじゃ電話して直接話したらいいじゃないですかって、そしたら…」
そ、そうかい、これから私はお父さんととっても大事なお話になるから、君はこれで美味しいものでも食べてきなさいよ。
「強引にお金渡されて、まっ、そんなわけでそのお金で、僕らはご飯が美味しいわけ」
「悪いな、俺も奢ってもらって」
二人は今ハンバーグが有名なお店にいるが、常連おすすめカレー定食を頼んだ。
健康処 楓は最初から有名というわけではなかった、有名になるきっかけというのがある。つまり先生も元からああだったわけではない。
とある不健康のせいだ。
そいつには何度も何度も、体に悪いことは控えてください、お酒の量を減らした方がいいですよ、子供さんがまだ小さいし、奥さんも心配していますよ?
などといっても。
「すいませんね、先生、またお願いしますよ」
こんな調子であった。
そして、ついに限界が訪れてた。
「えっ?先生」
ギュウウウウウ
「イデデデデ」
最初のツボは上手いこと押せたのだが、そのあまりの痛さから逃げようと体を動かした。
スッ
この時幸陽の体が自然に動いた。
高校時代柔道の授業で、お前は寝技を覚えろと言われ、地道に技を磨きあげ、大会に助っ人として呼ばれるほどの腕があったが、自分でもなんでここで動いたのかは未だにわからない。
「ギャァァァァァァ」
覚醒はそこで起きた。これは憎しみではなく愛であると、相手の健康のために、自分はただなるよう、効果的なツボをひたすら押していく。
「アアアアアアアア」
血行をよくなってきた、そしてここからの!
「グァァァァァァァ」
発声される悲鳴ではなく、肉体の悲鳴を感じとるのだ!!!!!!!!!
「その時の人は、後日、謝りに来たんだよ」
あの痛み、いっそ殺してくださいとそう思ったが、すぐに自分は今までなんてひどい生き方をしたいんだろう、やり直したい、やり直せるだろうか…
身なりを整え、酒量が減り、家族を大事にするようになったその姿に、何があったと周囲が驚き、そこで噂が広まっていき、楓にはワケありのお客さんが増えていったのだ。
「そういえば先生の書いたファンレターってどうなった?」
「あれはファンレターって言うのかなな」
この間珍しく真剣にテレビを見ながら、何かを書いていた。
「この子のむくみってきにならない?」
さすがにそのまま突撃はしなかったが、自分で出来るむくみとりのマッサージレシピを作成し、それをファンレターとして送ったらしいを
「返事くるといいな」
「あっ来たらしいよ」
「マジで?」
「カレーお待たせしました」
「おっ来た来た」
二人の間ではこの話は終わったが、実は続きがある。
ファンレターは楓への予約という形で返事がやってきた、そして今ごろ楓に訪ねてきている女性客がいるはずだ、ライブの前にむくみをしっかりとりたいっていう悩みを携えて。




