美しい変化~健康処楓1~
「すいません」
「どうした?」
「ちょっと具合が」
どうも体の踏ん張りがきかない毎日が続いている。
「おっ、どうしたんだ?」
そんな私に話しかけてきたのは同級生男子である。
「何時ものことよ、ほら、私って体温が夏でも35℃ぐらいだし」
自虐的にいったところ。
「じゃあ、こいつをやろう」
『サービス券 健康処 楓』と書いてあった。
「予約がとれれば、その券一枚で一回サービスだ」
そこまで話しはしない同級生がなんと、気前がいいことだろう。
検索してみた。
・不健康は許さない先生がいます。
・あの衝撃は忘れられません。
・店名の由来になった花言葉通り、美しい変化を迎えることが出来ました、ありがとうございました。
と腕はいいようだった。
「すいません、チケットをいただいたのですが…」
連絡して、日時が決定し、目印の楓の木を目指して歩いていった。
(あっ、これか)
県の銘木表示がある立派な楓。
「よっ!」
そこで話しかけてきたのは、あの同級生である。
「あれ?なんでいるの?」
「あの無料チケットは俺がマッサージ担当するやつだし」
「え~」
「なんだよ、嫌そうだな」
「お客さんが来たのかな?」
そこに家の中から現れたのは白衣の男で。
「先生、お客さんがチェンジですって」
「なるほどね、それじゃあ、空いているから私がやろうか」
「最初に言っておく、先生のはかなり痛い」
「えっ?そうなの?」
どのぐらいなの?と続けようとしたとき、近所の人が回覧板を持ってきた、それを見た先生は、近所の人にかけより、流れるように体を拘束し、肝臓のツボを押した。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」
あまりの激痛に悲鳴が響いた。
「このぐらい痛い」
「私、帰る」
「今帰らない方がいいですよ」
「どちら様?」
「先生の息子さん、俺らと同じ年」
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「先生はな、視界に不健康が入ると、許せないそうなんだ」
「そうなんだ、今は弟子に教えるからってことで、岩彰さんの不健康を見ても抑えられるけど、チェンジとなれば、どうなるか私でもわからないな」
「あっ、親父の目が光った」
「だな、諦めてマッサージしていったほうがいいぞ」
「無事に帰れるかしら」
「弟子に女性経験踏ませてやりたい気持ちが勝ってるうちに、早く中にいってくれ」
「親父、言い方!」
ここは良い子も見ちゃってるからね!
「それじゃ、岩彰さん、中へどうぞ、部屋の準備はできますので」
そして奥に通されてから。
「フットマッサージが終わる頃には、親父は次の予約入っているから、その隙に帰ってくれると」
「わかりました」
「じゃあ、マッサージよろしくね」
「任しておけ」
お湯にラベンダーオイルと、塩を入れて混ぜる。
「いい香りね」
「ここのマッサージは滅茶苦茶いいものを使っているから、何でもおすすめできるぞ」
「へぇ~」
「受け売りだけどもな、元々うちの母ちゃんがこの店の常連でな、それが縁で職業体験して、んでこんな世の中だから、手に技術つけろってわけでお世話になってるのさ」
「それであのチケット配っているわけ?」
「誰にでもってわけじゃないぞ、んでもってちゃんと技術は身に付けているから、人をマッサージするまで、ずっと蕎麦を打って練習してたんだ」
「何で蕎麦?」
「蕎麦には全てがつまっていると、粉を混ぜてとか、生地を伸ばしたりってな、アレルギーとかなかったら、今度そば打ってやるよ、うちの家族はそろそろ蕎麦に飽きてきたんでな」
「じゃあ、いただくわ」
ぎゅー
「そこ効くわね」
「自虐的っていうわりには、色々頑張ってるな」
「あら、わかるな」
「足の筋肉でな、ちゃんと歩いているな、偉いぞ」
「ありがと、でもなかなか良くなくてね」
「血行はよくないな」
「冷たい?」
「何としてもよくしてやりたいな」
「朗報って言えばいいのかな」
息子さんがタオルを交換に来た。
「どうしたんだ?」
「月二回ぐらいだったら、マッサージのために家に来てくれるといいなって、親父がいってる」
「ぁぁぁぁぁぁぁぁ」
表示はしてませんが、さっきから時々悲鳴が聞こえてきてました。
「二日酔いでうちに来るからだよ」
「近所でも有名だもんな」
「それは怒られないんですか?」
「近年増えている医療費の削減に繋がっているから、野放しになってる」
いいか、不健康な奴は、あの楓の木がみえる辺り、あそこを歩くときは気を付けろ、健康にされるぞ!。
その店の店主は近所からは妖怪扱いされていた。




