薔薇香るメン
今まではこのぐらい短いのは行き場がありませんでした。
「おう、来たか」
「来たわよ」
「悪いな、休みに」
「いいわよ」
「時間は大丈夫なんだよな?」
「今日はシャンプーの練習台になるんだから、他の予定入れないわよ」
「そうだよな」
「しかし‥内装は結構そのままなのね」
「まあな、元理容室だったわけだが、こういうのって逆に今じゃ作られてないから、それなら使えるものは残して、そしたら他に予算使えるからな」
レトロなクリーム色とオレンジの枠の鏡や棚。
「さすがに水回りは直さなきゃダメだった」
「予算足りないかもしれないって悩んでたもんね」
「そうだよ、じゃあ、椅子倒します」
「ふっふっ、お願いします」
彼女の髪は艶があり、ネコネコしないネコ毛という絶妙なバランスの毛質をしていた。
ザー~
お湯を手に当てて、温度を確認。まずは髪をお湯で洗い、汚れを落とす。
お客さんは男性が多くなるだろうが、女性のお客さんのために‥というか、この彼女が好きそうな、こんなシャンプーを入れてみました。
薔薇の香りが辺りに漂う。
「あら、いい香りね」
「まぁな」
こう答えてはいるが、心の中ではヨシ!である。
濡らした髪に垂らして、泡立てていく。
頭皮をマッサージしながら、地肌の汚れを落とすのだ。
「正直な」
「何?」
「何が女性の好みなのかわからんかった」
営業さんはひたすらこういうがあるんですよトークをしてくる。
「でもこれでいいんじゃない?」
悩んだとき、彼女だったら喜んでくれるだろうか?と思い、これならばいいんじゃないかで選んだ。
「これって買えるの?」
「う~ん、お湯で洗ってから、シャンプーするつもりがあるなら」
「それなら、このシャンプーはここで頼むわ」
「そうしてくれ」
練習して、このぐらいお湯で洗った方がいいを割り出すまで結構長くかかった。
自分を練習台にしたので、ここしばらく薔薇香るメンと化してました。
彼女の髪は前にシャンプーが合わなくて、ビックリするほど荒れて、そのハサミを彼が入れることになったのだが‥‥
「何を思い出したのさ」
「いや、前に髪ばっさり切ったなって」
「暑くなるから、ちょうどいいじゃんっていったじゃない」
「ショートカットも似合うけどもさ、その理由で切るのは結構心に来るのよ」
「でもその後のさっぱりヘッドスパはとっても良かったわ」
「そうだな、もうちょっとしたら、やるか」
「そうしたら、また来るわ」
「そうだな、じゃあ、洗い流すぞ」
ジャ~
「もうこのままずっと引っ張っていってくれないもんかね」
「えっ?何かいった?」
「いいや、何も」
洗い終わりましたら、椅子をあげまして、タオルドライをわしゃわしゃ。
「やぁ~さっぱりした、自分じゃこうは洗えないわね」
「じゃあ、この勢いで耳かきをします」
この時のびびった彼女の顔はたまらなくよかった。
「ええ、するの?」
「手前はきれいだが、おお‥耳の奥は結構」
軽くさわっただけで、ビクッと反応した。
「もう~やめてよ」
この二人の関係は、これからもずっと変わらないだろう。