語尾にヌンってつけないんですか?~健康処楓~
健康処楓を愛する会、その会の中でも上層部しか知らない会員がいたりする。
例えばデット。
クーポン目当ての怪しいユーザー向けに、クーポンに音声認識キーを導入した。
クーポンをお使いになる際には、敬語の上、こちらの語尾をつけ、音声にて認識させてください
「クーポンを使いたいのですが、お願いします…にょーん」
『ピッ、認識ができません、もっと語尾を大きくお願いします』
しかもこれ、小さい声だとなかなか聞き取ってくれない
「…すいません、クーポンなしでお願いします」
導入後クーポン狙いのユーザーがゼロになった。
健康を愛する会は体の不調が抱えたものたちが集まる会、不調をよくするために借金したりして、あちこちにかかってはため息を繰り返していたものたちなので、クーポンといわず、生活互助の側面が強い。
みんなでカレー作ったり、うどん茹でたり、この時期にもクーポンはあったのだが、手書きで、それを見た人が肩たたき券みたいなどといった。
その後、肩たたき券みたいといった男、彼が今の会員が受けれるアレな、いや失礼、小粋なサービスの骨組みを作ることになる。そして今では少数の人しか、知らない会員になっていった。
「申し訳ありません、こんな暑い中呼びつける形になりまして」
「大丈夫です、広報のシュさんから説明を受けていますし、ええっとなんとお呼びすれば?」
「ヌンで、こちらではヌンで通ってますから」
冷房がガンガン利いた平日のホテルのラウンジで、堅苦しい格好をした男性二人が挨拶をかわしていた。
「私、日光に当たりますと、皮膚が腫れ上がってしまいますので、そのためにこの時期の日中は出来るだけ外には出ないように、それでも外出するときはありますけども、普通の格好じゃダメですし」
まずヌンが外に出る場合はわマミーマミー(ミイラお母さんマークの化粧品メーカー)の日焼け止めを全身に塗った上で、帽子とサングラス、手や足も直接日光に触れないようにする。
「さすがにこればっかりは幸洋先生にも無理ですし」
日光のアレルギー反応である。
「そちらも事情は聞いておりますし」
どんどん体が弱っていく一方の頃に、栄養や肩こりや腰痛を幸洋に改善してもらったおかげで、多少体もよくなり、日焼け止めを使えるようになった。
「助け合うことというのはこの会の大事なこと、その方針はとても素晴らしいと思います」
会長は会員が楓に来るまで、辛い日々を歩んだということを知りとても心をいためた。そしてその分自分にできることがあるならば頑張らなければならないと思ったという。
ただ口で言うだけならばなんとでも出来るが、時間を見つけては、会で何か問題が起きたときはすぐに解決できるマニュアルを作り初めた。そしてそれを見たとき、シュから一度会ってほしい会員がいるという話があったのである。
ヌンについては歴代の会長でさえ、実際に会った者は少ないし、就任してこんなに早くは確かいないはずであった。
「遅れましたが、新会長就任おめでとうございます」
新会長は事前に資料も目を通しているらしく、その引用がヌンの好感度をあげた。
「しかし、ここまで面白いとは思いませんでした」
「笑いは含めるつもりはなかったんですがね…」
もっと大きな声でにょーんだ、にょーん!
「人生には笑いも必要ですよ、僕はまだ知らないことが多いので、よろしければみなさんから色々と学ばせてください」
病気や不調のせいで色々なものを失った、だからこそ、そこにある優しさは輝き、新しい生活が始まったのなら、そんな優しさが満ち溢れたものにしたかった。
「私は少しばかり厳しいですよ、会長、こちらこそよろしくお願いします」
「そういえば語尾にヌンってつけないんですか?」
「よく言われますけど、あれは元々クーポンの音声認識のためでしたから、それ以前の会員はつけてないんですよね」
語尾をつけるのは非日常、ストレス解消にも繋がり、オンとオフを切り替えるにはピッタリ、そのため語尾は任意だったにですが、今では新旧会員のみなさんが自主的につけているかたが多いようです。




