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お父さん、美肌だけで十分だから。

「へぇ、虎児(こじ)さんとこの息子さんマッサージしてくれるんですか、それで最近肌艶がいいんですね?」

「でも練習台だから、ここはどうだったとか感想言わなきゃならないんだよ」

「でも虎児さんはやっぱり息子さんだから、うちは娘なんで、距離感がさ」

この話にもあるように、虎児花時(こじはなとき)はたまに息子の謳歌(おうか)のマッサージを受ける。

「おおい、上がったぞ」

風呂上がりに居間にくると、三男がマッサージの準備をして待っていた。

ヌリヌリヌリ

暑い時期には気持ちのよいさっぱりジェルを伸ばしたら。

「おっ、そこ痛いな」

「ここは腎臓ですね、冷たいもの飲みすぎじゃありませんか?」

「あ~今日はちょっと暑くてさ、いつもより飲んでいるかも」

しゃべり方も、息子のいつものしゃべり方ではなく、お店の人といった感じである。

「歩きすぎかもしれませんね?」

「そうそう、歩いた、歩いた、だから湯船につかったら気持ちよくてな」

足首をくるくる回して。

「気持ちいい」

そこから脛のツボを押してから、リンパを指の腹で丁寧に流す。

「あ~そこそこ」

と息子から父へのマッサージはこんな感じである。

「父ちゃん、今日はどうだった?」

「気持ち良かったぞ」

「それだけじゃなくて、こうなんていうのかな、なんかない?」

「?なんもないぞ」

「あ~そうか、うちの師匠みたいにはいかないよな」

虎児の師匠は花信風菊露(くわしんふうきくろ)のことである。

もしも菊露さまが同じような場所をマッサージした場合、牛のような長ーーーーーいゲップがでます。

そうそう、しばらく止まらなくなりますきゃ。

この方は一時間ぐらい定期的に出ました。

エステが終わって、着替える時にうっ!ってなったピョン。

「俺もまだまだだな」

「お父さん、美肌だけで十分だから」

チッ

どこかで舌打ちが聞こえました。

そのためにどれだけ苦労しているのか!

おお、菊露様!私たちに救いを!

不思議なことに、今月のエステの予定が一晩で全て埋まったという。


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