私のチョキが唸った
腰痛持ちが駅から歩くとしたらちょっとしんどい距離に実梅町がある、ここに健康処楓はある。
この町内会の会館に、理美容師のみっちゃんは出張に来ていたが、近所とはいっても幸洋はしばらく知らなかった。
そんな幸洋が会館に行くきっかけというのはカレーである。
『やさいとれました、かれーつくります 200えん』
というチラシがポストに入っていた。青葉も学校でいないことだし、花信風幸洋とその妻である菊露はこのカレーを昼に食べに行こうということになった。
そこに引っ越しする前に通っていた理容師の息子であるみっちゃんがいたとである。
「みっちゃん」
「お久しぶりです!」
「こっちに戻ってきたのかい?」
父親がお亡くなりになったときまだ修行先で、店に戻るという選択もあったのだが、腕をしっかりとつけることを望んだ。
「それで戻ってきたんですけど、うちの店のものだと使い勝手も悪くて、リフォームしないと、その資金を今貯めてます」
前にいたお店が病院などの出張が多いお店だったので、足りないものは借りてるようだ。
チラッ
花信風夫妻が使っていた移動式の洗髪台を見た。
「幸洋先生、この人すごい人なんですよ
」
町内会の人が、カレーとサービスの冷やしトマトを運んできた。
「ほら、私、白内障やったでしょ、その時しばらくお風呂無理だから、髪洗ってもらって、そしたら気持ちよくって、そこからたまにやってもらってるんですよ」
「リース?」
「はい」
「あれ高さを調節しにくいわね」
夫妻の目線は業者である。そして夫妻は目で会話をした後に…
「良かったら、うちの洗髪台を使う気はない?私は今ホテルのお仕事がメインなので、一ヶ月に何度かしかうちのは使わないのよ」
時間があるときに一度見に来ないか?というところでそのときは終わったが、夜に菓子折片手にみっちゃんが楓を訪れた。
そして奥のエステブースに案内し、暗闇の中洗髪台とチェアにスポットライトに当てる。
「まさかの最上級モデル、しかもオプションの介助機能がついている、カタログでしか見たことない」
「これは便利よ、うちの子が風邪でお風呂に入れなかったときとか、髪を洗ったんだけどもね、腰が楽だった」
「気づいてたんですね」
「やっぱり腰辛かったんだね」
「ええ、高さがね、合わなくて、しかしこれ高いでしょ」
「展示品だったから安かったよ」
「ほしい人何人もいたと思いますよ」
「私のチョキが唸ったよ」
何人かいたのでじゃんけんで決めました。
みっちゃんは一目で洗髪台と椅子のセットを気に入ったので、実梅への出張営業は楓で行うことになった。
「じゃあ、やろうか?」
「何をです?」
そこからぎゃぁぁぁぁと、技をかけられみっちゃんは腰の不調とさよならした。




