若者の成長を見るのはいつも楽しい
みっちゃんは、花信風一家が引っ越しする前の近所の理容室の店長の息子さんでした。
「パパりんに髪を切ってもらうまで、私のヘアスタイルは迷走していたからね」
今の髪型を決めたのはみっちゃんのパパりんである朔太郎のカットであった。
衣服の上にバサッとクロスをかけられ、のびた髪を濡らしブラシをかけると、やはり幸洋と青葉は親子なんだなと思うぐらい、生え方はよく似ていた。
今日は幸洋はお休みの日である、というか休めオヤジと言い渡された。
青葉によって窓に遮光シートを貼られ、保冷剤で生み出した冷気によって、浮いた光熱費をまとめてもらったところ。
「あーーーーーーー!」
腹の奥底から声が出て、胃が飛び出しそうで、それならちょうどいいからひっくり返して洗いたい(逃避)したこともあり、休みになりました。
そのため髪も伸びたところだし、これ以上伸びて、マッサージ中に前髪が邪魔になっても嫌だからと、久しぶりにみっちゃんのお店の方に来たわけである。
「前と耳の位置はこのぐらいで」
「後はお任せで」
「オマカセデ」
そうみっちゃんはこれがある。
「それじゃあ始めます」
キラリと輝くハサミは準備万端。
この店主、お任せの注文でハサミを持つと豹変するのである。
むしろ幸洋先生は、いや、常連客はこれを楽しみにし、お任せを頼むのである。
みっちゃんの方も特に父の代からのお客ともなれば、父を尊敬している分、粗末なことをしてはいけないと、燃えるのである。
シャキン
彼がノッテイルかがよくわかるのは、このハサミの入れ方、大胆にいれている。知らない人はこれは大丈夫なのかと不安になるが、もう彼の頭には、こうすればベストの完成形が見えている。
そういうのが見えてないときの、一昔前の彼は、たぶん大丈夫だろうが一番前に出てしまい、手が本当に遅かった。
古い店のリフォームのために、今までとは違うタイプのお客さんたちを相手にし、それが自信になるまで真摯に向き合ったその時、今までためらっていた部分に一歩踏み込むことが出来たのだった。
(このヘアスタイルがあなたに似合います、その気持ちでgoだよ)
このお店も健康を愛する会のクーポン参加店になっております、お持ちの方はぜひご来店を!24ページでシュよ!
「先生、今日時間ありますか!新しいシェービングと季節の耳かきもやっていってください!」
「ああ、よろしく頼むよ」
若者の成長を見るのはいつも楽しい。




