この作品は優しさとは何かを問うものとなっております
左脇腹からニュっと幸洋の左足がでる。
ポン!
右肩に手を置かれると、置かれた方がピクッとした。
「ここからホールドするけども、優しさを忘れずに」
「はい、先生」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ」
この作品は優しさとは何かを問うものとなっております。
「哲学とは何かわかった気がする」
そんな弟子の虎児の言葉に、青葉は眉をしかめた。
「オヤジ」
「ああああああああ」
「結果出たから、それ終わったら発表するよ」
「わかった」
幸洋の手に少しばかり力は入ったが、それを技には加わらない。
さすがプロフェッショナルでごわす。
青葉が発表するというのは、保冷剤を使った室内の、玄関先の気温上昇と光熱費の測定結果である。
「僕がいうより見て」
ペラリ
「アアアアアアアア」
「あれはすごい浮いているな」
「だからあれほど毎日結果を聞いていけばよいと」
天気予報を見ながら、この気温で、室温がどう変わるのか。青葉は細かくつけていたし、毎日今日の分も金額としてだしていた。
「アアアアアアアア」
「えっ?何、それだと損している分の実感がない?まとめた金額だからこそショックが大きい?」
「なんでわかるんだよ」
「こっちに訴えるものがあるとわかるもんだよ」
「俺には一切わからんがな」
「じゃあ、明日から遮光シートを窓に使って計算するから」
「アアアアアアアア」
「これは、(岩彰)ゆすらに言われたことを思い出したのか」
先生、光熱費浮かす気なら、窓から熱入ってくるから、それなんとかしないとという話を聞いたときに叫んだのだが、今その時を思い出したようだ。
「虎児もわかるじゃん」
「今のはなんでかわかった」
叫びにも喜怒哀楽があるようです。




