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真夏だと間に合わないかもしれない

「暑ぃ」

虎児(こじ)が健康処楓に行くには家からでも学校からでも距離があった。

楓のある辺りというのはいわゆる旧市街地区で、景観を重要としているため、昔から住んでいる人たちがメインであり、花信風(くわしんぷう)一家のようによそから引っ越してくるというのは希であった。

「ここら辺は水とか良くてね」

お客さんにマッサージの前に水やお茶を淹れたりすると、味がとても良いのでこちらに決めたという。

「後はこの物件は広いんだけど、敷地内に銘木があるから、その手入れをしなきゃならないぶん、土地建物は安かったし」

秋には見事な赤に染まるであろう、楓の木は、夏の暑さでもイキイキしているようだ。

「こんにちは」

玄関をあけると、冷気が虎児の頬を撫でる。

もう誰かいるものかと思ったが、玄関先には凍った保冷剤をつっこみ、水を入れたバケツが置かれていた。そこから冷気が吹き出ている。

「これは…」

見覚えがある。

先日同級生の岩彰(いわあき)が体調を崩し、休んできますと教室からでていったのを、見舞いにいったところ、休んでいる部屋がビックリするほど涼しかった。

「あら」

ソファーに横になっている岩彰。

「ここってクーラーあったのか」

「ないわよ、こんなところで寝ちゃったら熱中症になるじゃない」

だから冷気をこしらえたという。

「こしらえる?」

見ると換気扇の下に、バケツがあるではないか。

「冷凍庫に保冷剤あるから、このぐらいの広さだと(六畳ぐらい)だと、二個ぐらい、バケツに塩水作って、そこに保冷剤入れると、涼しくなるわよ」

実際に外から入ってきた虎児は汗が止まっていた。

(なるほどあれだな)

楓の玄関にクーラーをもう一個つけようかなっていう話は、幸洋先生がしていた。

「うち断熱性能はいいけども、玄関だと開けたり閉めたりするから、真夏だと間に合わないかもしれないしね」

そんな話を先日していた。

「虎児くん、玄関見た!」

「見ました、これ、(岩彰)ゆすらのやつですよね」

「そうなんだよ、玄関先にクーラーつけようかなって思ったら、青葉からホームセンターは2ヶ月待ちって聞いてさ、どうしようかと思っていたら、岩彰さんがね!」

「ここはクーラーがあるから、それなら」

バケツに塩水作って、そこに保冷剤を入れた。

「作って見せてくれて、実際に涼しくなったら年甲斐もなく興奮しちゃったよ、これだけでこんなに涼しいんだもん、岩彰さんすごい」

「なんか話聞いたら…」

魚屋さんで氷に塩をかけるじゃない、あの氷をシンクに捨てて水が当たったときに、気温低下しているのをみて、試しに一回作ったわけ。

それで体調が悪くて休んでいる時に、クーラーがない場所だったりすると、学校にも保冷剤と塩はあるし、ないなら持ち込めるので、勝手に涼しいところ作っていたそうだ。

「100円ショップで売っている600グラムの保冷剤二個と、塩は安いのでいいし、一袋68円のを量は適当で」

値段で説明するのがゆすららしい。

「保冷剤二個で二時間ぐらい冷気吹き出してたんだ、保冷剤さえ交換すれば吹き出し続けるしさ」

六時間凍らせるタイプの保冷剤を8つぐらい買ってきた、今幸洋先生が保冷剤交換係をかってでた。

「水に入れてから、ちょっとするとね冷気がわき上がるっていうの、あれがいいよね」

そこまでじっと見てしまうらしい。というわけで真夏日になると楓の玄関先に保冷剤入りのバケツがおいてある、そのバケツから吹き上がる、涼しい風がお客さんたちをもてなしている。

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