メモりに行くからヨロシクね!~健康処楓9~
「イタタタタタタタ!」
「いい、悲鳴の奥を見るの」
そう虎児に教えるのは、同じ年であり、師匠の一人息子の花信風青葉である。
「イタタタタタタタ‥あれ?辛くない」
青葉は腰痛になったらここにいけばいいよという先生の元で習い、もう一人前に改善が出来るので、時間があれは青葉からも虎児は学んでいたのだ。
「座りすぎです、右手で書き物?しているせいか、前のめりになって固まっているのをほぐしました」
「ありがとうございました」
「同じ年とは思えない落ち着きぶりだな」
「その言い方もさ‥」
不満のようだ。
ここは健康処楓、そこに調子が悪いと来たが、父親が留守だったために急遽青葉が見たのである。
「腰痛以外もしっかりみれるものな」
本人は腰痛をなんとか出来るなら食っていけるからとはいってはいるが、父の影響か、それとも性格のせいか、まんべんなく技術を持っている。
「ソイヤ!」
そこに青葉の父、虎児の師匠である幸洋の声が聞こえた。
なんだなんだと、外に出たら、先ほどまで青葉にみてもらった男に、幸洋は水平チョップを食らわせていたのだった。
「あれ、さっき辛くないから、もっと軽く」
「最近ちゃんと眠れてる?」
「いえ、それも‥」
「それね、ちょっと集中しすぎた状態が続いているわけ、今のでその糸をぷつーん切らせてもらったので、寝るのも今夜から楽になると思うよ」
その男を見送ったあとに。
「ただいま、二人とも」
「おかえりなさい先生」
しかし、青葉は返事はしないまま家の中に入ろうとする。
「もっと腕磨いておくから!」
姿が見えなくなってからそう奥から聞こえた。
「そうなったら、メモりに行くからヨロシクね!」
息子の言葉に父はそう返事をした。
そんな親子関係を見ながら、虎児はニヤニヤしてしまうのである。