市内でしたらどこまでいっても2000円~健康処楓6~
体に不安を抱えたままの状態で、何かをするというのは、予想以上に絶望の中にいる。
「手術しないとダメですね」
腰から足のしびれが始まっていた私にそう告げられた。
ただこの時他の病気でかかっていた医師からは、「手術してもなるから、運動、保存療法にしたほうがいいよ」と言われたため、またなるという話から、不安と付き合いながら、生活をする日々が始まった。
振り替えれば何年間このような状態、毎日辛かったのだが。
「キエー」
同じく腰の悩みを抱えた知り合いが、良くなったと知り、知り合いからここだよと勧められた健康処 楓の花信風先生に投げられたら、その苦しみは終わったのであるを
「あれ?」
「どこか、違和感が?」
「え?え?」
私は夢を見ているのだろうか、力を入れても空回りするあの感じがない、体が思い通りに。
「あは!」
確認していくと、涙と鼻水がぶぁぁぁぁぁと出てきた。
「先生、今まですごい辛かったよ」
「こうしてまた一人、先生を神と称える者が増えたわけだ」
弟子の虎児と。
「言い方!」
つっこみをしながら、泣いている人のためにタオルやティッシュを用意するのは、健康のためならば私は神にも弓を引く男、花信風幸洋(くわしんぷう こうよう)の一人息子青葉である。
「でもさ、この辺の運転を仕事にしている人とか、ほとんどが先生!先生!って慕っているぜ、先生が出張できるようになっているのもこのおかげだし」
日宿交通のおすすめプラン。
・駅から健康処 楓までの往復便は3000円。
・市内でしたらどこまでいっても2000円で先生をお届けするでゴワス。
「さと、午前のお客さんは今ので最後だね」
「オヤジ、かき氷作っていい?」
「いいね、お願いするよ」
「じゃあ、出来たら俺が持ってきます」
先日先生ヘルプ、手伝いに来た婿の腰がやられちまったよと、山でブドウ作り最盛期の農家から連絡がきた。
婿の腰だけでなく、溜まっているであろう疲れをむしりとるため、花信風一家で出張にいった。
「花信風って読めないわよね、私が言えたもんじゃないけど」
その時葡萄を買ってきたが、そこは町中の価格ではなく、山での価格だったため、買えた量がとんでもないものであった。
「無駄にならなくてよかったな」
生で食べれるものは食べたのだが、そうではないものはジャム加工体験にいった岩彰がそれを材料に、かき氷に合うジャムにしてくれた。
「これだと急いで食べなくていいし」
「マダムホワイト(虎児のお母さん)が目えつけそう」
「うちの母ちゃん好きそう」
マダムホワイトは、前に虎児の母が所有していたコインランドリーの名前からである。
虎児の父親が入院した総合病院でコインランドリーが無くなったと知り、病院の駐車場のところにバン!と店を始め、その導入している機械を新しく買い換えなければならないかな?の時期を迎えた辺りに、大手からお店を売ってほしいと言われ、売却した。
「そしたら病院が一般人立ち入り禁止、面会もできなくなったからな」
この二人、虎児と青葉は元々小学校の同級生である。
青葉が現在すんでいるこの楓に引っ越すために、転校してからも、母親同士の交流は続いていたのだ。
「これできたから、持っていってくれる」
葡萄の果肉がたっぷりと氷に乗っている、氷もすぐそばの酒蔵が使っている水のもので、この時期は他の水が飲めなくなるぐらいすこぶる旨い。
「後、クリーニングの伝票を持ってきてくれる?」
「わかった」
ビスケットを軽くつまみ食いしながら、かき氷を持っていくと、書斎に幸洋の姿がない。
「先生?」
とけては困るので、書斎の冷凍庫にかき氷を入れると。
「うううううう」
うめき声が聞こえてきたので、それを頼りに待合室にいくと。
幸洋は誰かにスープレックスかけ中であった。
それを見て、虎児は頭の中で、五臓六腑に効く先生の技一覧を思い出すが。
「虎児くん」
「あっ、待ってください、今思い出します」
え~とあれでもないな、これも違う。
「先生、俺の不勉強でした、これはなんでしょうか?」
「ヒャクトウバン」
「ひゃくとうばん‥」
その名前に心辺りがなかった。
「この人は空き巣」
「なんだ、空き巣か」
そうホッとすると。
「何しているのさ、警察だよ、警察!」
あまりにも来ないので、様子を見に来た青葉が急いで通報しました。