負けず嫌い
耳かきとサロンを両親として、生まれた物語は、やはり少し独特である。
「さすがに限界」
彼女を見つけた途端、ふらっと後ろに回って、肩に顔を埋めた。
「忙しいのはわかる、求められてはんかる、けどフォローもなしには出来ない‥」
「はい、そこ座る!」
「えっ?」
「座る!」
「あっ、はい」
ぺたん。
ぶっちゃけ彼女となんだかんだで上手くいくのは、こんな感じなのである。
「疲れてますね」
「とても疲れてます」
「今から準備します」
彼女も最近の忙しさを知っていたので、ある程度用意はしていたらしく。
後はケトルでお湯を沸かすだけにしていあ。
フットマッサージ用の、いわゆる足湯用の容器。
(いつの間に用意したんだ)
よいしょ、よいしょと運んできました。
足湯の準備をしている間に着替え、終わってから彼女を見ると、沸騰したお湯をざばぁぁと流している、このケトルで沸騰したお湯を入れる、そしてメモリの位置まで水を入れると。
チャプン
ちょうどいい温度になる。
ここにバサッと入浴剤用のソルトを入れて、ぐるぐるとかき混ぜ、溶けたのならば、タオルで手を拭きながら満足そうな顔をしていた。
「この着替え用の夏パジャマもいつの間に新しいのに」
「もうそろそろ暑くなるでしょ?そこに夏でもサラリとした、普段はパジャマには使わない、いい素材のものがあったわけよ、そしてそこに貯まったポイントがある、後はわかるでしょ」
ポイントは家電を買い換えたら、予期せぬほどいただきました。
サワ
ここで彼女は彼のパジャマの袖を撫でた。
「これよ、これ、このさわり心地がいいのよ」
むしろ、ここで喜んでいる彼女がいい!
チャプ
お湯の中に足を入れる、ちょうどいい熱さである。彼女もすぐに膝をついて、足を触ってくる。
凝りの具合を確認しているのだが、さわさわさわさわ這っていた、そこを。
グッ!
(うっ)
足の裏、膀胱のツボが痛い。そこを遡って、色々と見たあとに、足をお湯からあげて、タオルで拭いていく。
クリームを手にタラシ、それを掌で広げてから、足に塗る。薄く、足の指から、膝の辺りまで伸ばして、タオルで、両足をくるむ。
その間にお湯を捨て、手を洗い。ポットとコップのセットを持っておく。
「中身は?」
「プーアル茶、ウーロン茶も混ぜている」
こういうお茶も、味が毎回違うので、配合を変えているようなのだ。
「お茶の世界は深い」
代謝がよくなるとか、体をあたためるとか、なんか色々あるそうだ。
彼女は元々自分の体の不調をケアするためにここまで詳しいのだ、そしてマッサージと腕はプロじゃない?これレベルの腕である。
最初の頃、寝落ちした俺をマッサージし始めていた。疲れてそのままの格好も、剥かれ、着替えさせられ。
「何でそんなこと出来るの?」
「学校の体験学習でやらされた」
そこは介護の資格も取れるところで、しかしそこにはいかなかったらしい、倍率がその年は高かったそうだ。
「後そういう試験の会場になったから、患者役として生徒がなったりするんだよ」
毎年そういうのが行われるのを手伝っていたら、横にして、袖を‥などが出来るようになったと。
そんな彼女の行動に、抵抗するわけではなく、彼女に任せていた。
「やっぱり男の人は違うわね」
「そう?」
「もっと強い方がいい?」
「あ~それはあるかもしれない」
「そっか」
ここで彼女の心に火がついたらしく、どうすれば気持ちいいのか、負けず嫌いで勉強し直していた。
こういう負けず嫌いは最高だな!
両手で左足を挟んで、くねくねくね。
足の指を一本づつ、右にぐるぐる、左にぐるぐる。
キュ!
(あっ)
また痛い。胃のツボである、そこは少し強く押して、くりくりくりツボの周りをほぐしていく。
「あ~そこそこそこ」
悶絶である。胃から、腎臓のツボを押して、膀胱まで流す。
「大分弱っているわね」
「痛くない所がないんじゃないか、これ」
冗談でいったが、彼女の顔から、冗談ではないようだ。
「このクリームって高いんじゃないか?」
さすがに話題を変えた。
「そんなことないわよ、一回100円ぐらいじゃないかな」
市販され、お求め易いもので揃えています。
「本当、いつも悪いねぇ」
「とっつぁん、それを言ったらお仕舞いだよぉ」
「どっか行きたいとか、欲しいものあったら考えておいて」
いつもマッサージしてもらうだけだと、関係は続かなくなるということで、代わりにこういうことをしている。
それで向こうが甘えたいときに甘えてもらえばいいかたって、思っていたりする。