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堕ちる勇者と奴隷だった聖女  作者: ちょこっと淑女(蒼凪美郷)
1/9

勇者の夢

サークル『ちょこっと淑女』主催

聖なる夜に贈る悲恋物語企画


あらすじにも書きましたが

ハッピーエンドはありませんので苦手な方はご注意ください。

※企画が気になる方は是非、ページ下部にある『作者マイページ』からどうぞ。


 勇者の名はセーヤ。

 夢と希望を胸に抱く、正義感に溢れたまっすぐな青年であった。


 共に旅立った仲間は、この国の姫である可憐な魔法使いとその護衛である頼れる騎士隊長。

 世界を救う旅は、セーヤにとって元の世界とは勝手が違う世界での旅であり、それはそれは過酷であった。

 戦闘の経験もなければ、剣も振ったこともない。平和な世界で平凡に生きてきたセーヤには、毎日襲い来るモンスターや魔王の手先との戦いが一番辛かった。逃げることも許されず、しかしこれが勇者としてセーヤに備わった力なのか、身体は戦に投じようとする。


 人並み程度の体力しか持ち合わせていないから、毎日ぼろぼろになって泥のように眠った。

 そんな中で支えとなったのは、魔法使いの姫と頼れる騎士隊長だ。彼らはセーヤを励まし支えてくれた。


 ピンチになれば共に助け合い数々の試練を乗り越えてきた三人の絆は、半年も過ぎれば確固たるものとなる。

 特に、魔法使いの姫とは歳が近いこともあって話しやすく、彼女の存在はセーヤには心強かった。

 可憐な魔法使いの姫といると、時々心が揺らぐこともある。

 それでも、セーヤの感情の影にはいつも愛する彼女の姿があった。


 共に異世界召喚された幼なじみの恋人。

 昔は弱くて泣き虫で、そんな自分をいつも守ってくれた強いひと。


 セーヤは彼女を幼い頃から大切に大切に想い続けた。

 ────今度は俺が守る番だと、想いが叶った日に誓った言葉は今も胸の奥に刻まれている。


 出来ることなら彼女と旅に出たかった。

 何の縁もない見知らぬ世界で、彼女を独りになどしたくなかった。


 毎日ご飯は食べられているだろうか。

 辛いこととかあったりしていないだろうか。

 明るくて活発だけど意外と熱を出しやすいから、慣れない生活に体調を崩したりしていないだろうか。

 ────彼女にも心強い存在がいるだろうか。


 自分が守る番だと誓ったのに、そばにいられないことが辛かった。


 彼女は聖女として召喚されている。

 あれから毎日、世界を護るための祈りを捧げていることだろう。

 そんな大切な存在なら、きっと優遇されているはずだ。

 自分のように魔王の手先に襲われたりなど危ない目に遭う事はない。

 自分のように、時にはその日の食事に困ったり野宿を強いられるような過酷な環境に置かれてなどいないだろう。


 聖女の祈りによって創られる結界の中で、安全に暮らしているだろうと。


 だからセーヤは夢を見ていた。

 平和になった世界で無事に再会することを。

 そしてその時にはもう一度彼女を抱き締めて、旅の果てに逞しくなった自分で愛を紡ごう。


 知らぬ世界の空をキャンバスにして、何度も何度も夢を描いた。

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