仏教徒の私(わたくし)が布教のために異世界に飛ばされた件
圧倒的ノンフィクション
頑張って書きました
皆様、突然ですが、いかがお過ごしでしょうか?私の名前は後藤建と申します。私はまだ学生でして、本日も学業に勤しんでおりました。今は木彫りの仏像に、日課である仏様への祈りを捧げているところです。しかし最近は祈りの最中に、妙な気配を感じていました。これが野生の勘というものでしょうか?
などと考えていると、
(建…後藤建……聞こえていますか…?)
何処からともなく声が聞こえてまいりました。このような経験はなく、戸惑ってしまいましたが、その声の主は次に
(あなたに私の姿は見えません……私はあなた達が神と呼ぶ者です…)
と仰いました。まさかこの声の主が神様だとは、夢にも思いませんでした。ですが、何故?
「神様が私のような者に何の御用事でしょうか?」
(あなたは熱心な信徒です。なので、あなたに神託を授けに参りました)
「なんと!神託ですか…。しかし、私は仏教徒です。何故仏様ではなく神様がいらっしゃるのでしょうか?」
『こういう場合は大体神が出てくるものなのです』
「このような場合は大体神様がお出でになるというのはどういうことでしょうか?それに、先ほど申し上げた通り私は仏教徒なので、お告げを授けられる時は仏様か仏様が使わせた方がお見えになる方が正しいと思うのです。加えて、私が神託を授けられるような人間であるとは思えませんし……」
『ちょっと静かにしててもらえます?私も暇ではないので、手短にいきたいのです』
「申し訳ありません」
『では、神託を授けます。あなたにはこれから、こことは違う別の世界、つまり異世界へ行き、その世界の人々に仏教を布教していただきます。行き先はランダムになってしまうので、そこがどのような世界か私から言うことは出来ませんが、どんな世界に行ったとしても不自由がないように加護や道具を与えます。こちらの世界へ帰る時は、充分に布教が出来たと仏が判断した場合、そこでもう一度神託を出し、こちらの世界に帰します。長くなってしまいましたが、分かりましたか?』
「ふむ、私がいる世界とは別の世界ですか…。それはどのような世界なのでしょうか?世界が違うということは、そこで形成される文化がこの世界のものとは違っているでしょうし、文化が違うということは、そこに住む人々の言葉や服装、価値観、考え方も私達とは異なると思うのですが、その場合はどのようにすればよろしいのでしょうか?人々の姿が私達のような二足歩行の人型の生物ではないこともありえますし、まだ文明が起こっていない場合や、文明が進みすぎていて、宗教が重要視されていないといったことも無いとは言い切れません。そもそも、彼等には彼等の宗教があるでしょうし……」
『うるせえ!話が長えんだよデブ!こっちだってお前に言われなくとも文化の違いやらなにやらは分かってんだよ!ランダムって言ってもこの世界と似たような世界からしか選ばねえよ!考えてねえ訳がねえだろ考えろバーカ!』
神様がお怒りになられてしまいました。恐ろしいです。話し方や声が先ほどまでとは違いますね。姿は見えませんが、そのご尊顔は真っ赤に染まってしまっているでしょう。そのご尊顔をうかがったことはありませんが。しかし、何故神様はお怒りになられたのでしょうか?
「い、いきなり叫びだして、一体どうされたというのですか?私になにか至らぬ点がありましたらお教えください。私は神様に説明していただけなかったことを質問しただけです。神様が私にお怒りになる理由は無いと思うのですが?」
『それだよ!話が長いって言ってんだろ聞けよ!俺だって暇じゃないってさっき言ったよなあ!?怒ってる理由はそれだよ分かれよ何で分かんないんだよ!お前話が長いとかしつこいとか面倒くさいとか言われたことない?友達とかに』
「友達と呼べるような方は残念ながらいませんが、私は話したいことを話しているだけですので、自分の話が長いと思ったことはありません。ですが、先生やクラスメイトには話をもっとコンパクトに、分かりやすくと言われたことはあるのですが……」
『言われてんじゃん!改善しろよ!何で直さないんだよ!あとやっぱり友達いないんじゃん!そりゃいねーよこんなやつに友達なんてさあ!』
「そう言われましても…」
『もういいや、お前異世界行ってこい』
「本当に行かなければならないのですか?先ほどの質問は疑問に思ったからしただけですし、私はまだ行くとは申し上げていないのですが」
『は?この話をしてる時点でお前の意志に関係なく異世界行きは決まってんだよ。覚悟決めろよ、男だろ?』
「いえ、ですが…」
『ごちゃごちゃ言ってないでさっさと行けよ、ホラ』
そう神様がおっしゃったとたん、私の視界は真っ白になり…………
…………気がつくとそこは、先ほどまでいた私の部屋ではなく、見知らぬ草原でした。
今のは一体、どのような力を使って私を異世界へ旅立たせたのでしょうか…?しかし、ここで考えていても仕方がありません。私愛用のリュックサックを知らない間に背負っているので、これも神様のお力なのでしょうね。素晴らしいです。幸い、ここは街道のようですので、このまま道なりに歩いてみましょう。
…
……
………
『神様、お疲れ様でした。』
『あ、うん、お疲れ』
『それにしても、すごかったですね彼』
『いろんな意味でね…』
『ところで神様、彼にはどんな加護を授けたのですか?』
『彼には【自動翻訳】と【ステータス】、それと【剣の達人】スキルを与えてやったよ。あと、彼が愛用していたリュックも持たせた。中には財布と私からの推薦状が入っているし、なんとかなるでしょ』
『え?仏様から送られてきた情報には、彼は争い事が嫌いで、小学生の時に剣道を習っていたそうですが、「人を傷つけたくない」という理由で3ヶ月で辞めたそうです』
『マジ?小学生の時だよねそれ?』
『そうみたいですね。あと、生き物を傷つけることも嫌がるようで、高校の授業でカエルの解剖をしたときに、「カエルが可哀想だ」と言って泣いて、ノートにひたすら般若心経を書き続けたそうです。』
『何してんの彼』
『ただの変わり者ですね。というか神様、加護の内容伝え忘れてますよ。』
『そうだ忘れてたわ、失敗したわ。まあ「ステータスオープン」って言えば分かるし、大丈夫でしょ、多分。知ってるでしょ、小太りの眼鏡なら』
『うわあ凄い偏見だなあ』
………
……
…
「おい!そこのお前!お前だよメガネ!」
街道をしばらく歩くと、野太い男性の声が聞こえてきました。周りを見ても、この場には彼と私以外に人はいません。この道はあまり使われないのでしょうか?となると、私を呼んでいるのでしょう。
「先ほどから私を呼んでいたようですが、私になにか御用でしょうか?私は貴方とは初対面だったと思うのですが」
「そりゃそうだ。俺は盗賊だぞ。エモノとは一回しか会わねえよ」
「貴方は盗賊なのですか!?貴方は人の物を盗んで何とも思わないのですか!?」
「思わねえなあ、これっぽっちも。まあ時々ゴミみたいなモンしか持ってない奴もいるが、そういう奴は殺しちまうよ」
なんて人でしょう!こんな人を許してはおけません!
「ゴミは貴方です!窃盗だけでなく殺人までして平気な顔をしていられるなんて、最低ですよ!貴方の外道さに腸が煮えくり返りそうです!」
「ヘッ!勝手に言ってろ。まあ安心しな、俺はお前は殺さねえよ。俺が欲しいのはお前が背負ってるソレだけだ。お前は五体満足で帰してやるよ」
「貴方に差し上げるものは何一つありません!大人しくお縄についてください!」
「そう言われて捕まる阿呆がいるかよ!くらえ特製玉!」
彼はそう叫ぶと、球状の何かを投げてきました。それは私の足元に着弾すると、黄色い煙が出てきたかと思うと、次の瞬間、私の体は自由が効かなくなり、そのまま地面に倒れてしまいました。
「今のは一体……?」
「俺特製の吸い込むと痺れて体が動かせなくなる煙をつめた玉だ。5分くらいで効果が切れるが、そのくらいの時間があれば簡単に盗めるぜ」
「貴方はどこまでも…!」
「おー怖い怖い。そんじゃ、俺は盗るモン盗ってとっととずらかりますかね」
そう言った盗賊は、動けない私からリュックサックを奪い取り、そのまま何処かへ行ってしまいました。
……
ようやく動けるようになったので周りを見渡してみましたが、もう盗賊の姿はありません。リュックサックを盗まれてしまった私は、これで無一文になってしまいました。とても悔しいです。
しかしここで落ち込んでいても解決するわけではありません。ひとまず私は道なりに歩いていくことにしました。
……
ようやく町につきましたが、門番さんがいます。おそらく身分証が必要なのでしょうが、生憎財布ごとリュックサックを盗まれてしまったので、現在の私の身分を証明出来るものがありません。困りましたが、背に腹は代えられません。事情を説明すれば、入れてもらえるかもしれません。通してもらえるか聞いてみましょう。
「すみません、ちょっとよろしいでしょうか?」
「何だ、旅の者か。身分証を出せば通してやるぞ」
「その身分証なのですが、先ほど盗賊に盗まれてしまったので持っていないのです。」
「盗まれたか、そりゃ残念だったな。じゃあいくつか質問するから、それに答えてくれ。お前さんが危険な奴じゃないとわかったら、簡易身分証を発行してやるから、それをもってギルドに行け。簡易身分証を見せればそれを元にギルドカードを作ってくれるさ」
「お手数をお掛けしてしまい、申し訳ありません。」
「こっちも仕事だ、気にすんな。それじゃあさっそく質問するぞ。」
「よろしくお願いいたします」
「まず一つ目。名前は?」
「後藤建と申します」
「ゴトー・ケンか。二つ目の質問だが、ゴトーは何処の出身だ?」
「日本という国から来ました。海に囲まれた島国ですね」
「聞いたことねえなあ、そんな国。まあいいや、遠くから来たんだな。じゃあ三つ目だ。ここに来た目的は?」
「私がここへ来た目的は、仏教という、日本で信仰されている宗教の布教です。神様から神託をいただき、この世界にやって参りました。」
「神様から神託を?お前、この国が何処だか分かって言ってるのか?」
「いえ、申し訳ありませんが、存じ上げません」
「ここは宗教国家グランド。この国の民は全員、創造神グラドスを崇めるグラドス教に入信している。周辺国家も貿易はするが、自国の宗教は布教しに来ない。そんなこの国では、神に関連する事はとても慎重に発言しなければならない。そんな中お前は、神からの信託を受けたと言った。それは本当か?」
「ええ、本当です」
「では、その神の名は?」
「……………」
「言えないか」
「き、聞いておりません」
「ゴトー、お前は神から神託を授かったと言っておきながら、その神託を授けた神の名前を知らないと言った。これはこの国では立派な犯罪だ。それも重罪だ」
「いえ、その…、私は……」
「残念ながら、お前の話を聞いて黙っている訳にはいかないな。こっちも仕事なんだ。悪いが、捕まってもらうぞ」
「何故ですか!?私はこの国のことは知りませんでした。勿論、この国の法律も存じ上げません。それでも駄目なのですか?」
「お前の国では、法律を破った人間がその法律の事を知らなかったらその人間は無罪になるのか?」
「それは…」
「ならないよな。それと一緒だ」
「しかしですね……」
「つべこべ言わずさっさとお縄につけ。ここで抗議したところで、お前の罪が無くなることはないぞ」
「そんな…」
こうして私は神の名を騙った大罪人として、処刑されることが決まってしまいました。しかし、私がいたの世界の神様は、私のことを助けようとしてくれません。私はどうすれば…?
……………
何も出来ないまま、とうとう処刑の時が来てしまいました。私はもう助からないのでしょうか…。死にたくありません……。こんなところで……!
「何か言い残した事はないか?」
その処刑人の質問に対して、私はありったけの怒気を込めて、こう言いました。
「こんなところで死んでたまるか!」
「そうかい」
私の遺言を聞いた彼は、手に持った槍をそのまま私の胸へと………
……………
気が付くと、私は自分の部屋にいました。
どうやら今までの出来事は夢だったようです。それにしては、随分とリアリティーのある夢でしたが…。
まあ、夢なら夢でいいでしょう。と私は深く考えることを止め、学校の課題に取り組むことにしたのでした。
……
………
…………
『まさか死ぬとは思わなかったわ……ビビる』
『まあ生き返らせることは出来ましたし、良いじゃないですか。本人も夢だったと思ってるみたいですし』
『じゃあいっか。次は誰を異世界に送ってやろうかな』
『どうせ次も陰キャですよ』
『あいつらすぐ異世界行きたがるからな』
『それもそうですね』
~完~
くぅ~疲れましたW これにて完結です!




