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外伝22 ドローン戦

 「四天王か!」

 ラクダから飛び降りて、剣を構えながらそう叫ぶと、

 「俺は風のドローン。砂魔人様の復活を邪魔させないぞ」

と杖をなぎ払った。

 途端に目の前に竜巻が発生する。

 視界の端でシエラが王子とユーミを抱えて、神竜の盾の結界を張っている。

 強い風に体が引っ張られ、巻き上げられそうになる。視界の端で俺たちのラクダが巻き上げられていくのが見えた。

 「ぐぐぐ……」

 その時、俺の背後から巨大な火の玉が竜巻に打ち込まれた。火の玉は竜巻に巻き込まれるや、大爆発を起こす。その衝撃が竜巻を内側から吹っ飛ばした。

 背後を見ると、春香が杖を構えていた。

 「よくやった。春香」

といいながら、ドローンに走り寄って剣で斬りかかる。俺の剣をドローンは杖で受け止めた。

 間近でドローンとにらみ合うと、奴の赤い眼が不気味に光った。

 危ない!

 何かわからないが、危険を感じてあわてて後ろに飛びずさると、さっきまでいたところに土中から巨大な杭が何本も突き出していた。


 その時、俺の頭上から、

 「メテオ・ストライク!」

というシエラの叫び声がして、光に包まれた巨大な隕石がドローンに落ちてきた。

 再びの爆発に砂が舞い上がったが、すぐに風で吹き消されていく。

 見上げると左手を失ったドローンが空に浮いていた。

 「さすがは竜騎士か。やるな! ……だが、まだまだだ」

 そういったドローンの左肩から、ずぼっと新たな左手が生まれた。

 うげっ。気色悪い。


 「サウザンド・ウインドスラッシュ」

 ドローンを中心に暴風が吹き荒れ、その中から幾条もの風の刃が飛んでくる。

 眼を細めながら、飛んできた風の刃を斬り飛ばしつつ、後ろの春香を守る。

 王子たちは再びシエラが守っている。

 「サンダーボルト」

 王子の小さな声が聞こえると、空から雷がまっすぐにドローンに落ちた。

 「あががが」と言いながら、ドローンが砂丘に落ちる。そこへユーミのロケットが飛んでいく。

 ユーミが「いっけ! ファイヤ!」と叫ぶ。

 ボンボンボンボンっ。

 次々にロケットが爆発し、砂塵が舞い上がった。……どうだ?


 慎重に様子を窺うと、突然、今までで一番大きな竜巻が出現した。

 春香が背中から抱きついてくる。

 猛烈な風が吹いたが、現れたときと同じように唐突に竜巻が姿を消した。

 そのかわりに空にたたずんでいたのは、羽の生えた飛竜のような鳥の化け物だった。

 「ぐぎゃぎゃぎゃ! そろそろ本気といこうか」

 ドローンが、風の刃を身に纏ったままで王子に突っ込む。

 シエラの神竜の盾が光のドームとなって守るが、ガガガガッと凄い音を立てている。

 「固いな。……なら沈め」

 ドローンがそう言うと、シエラたちの足下の砂がうごめきだして、光の防護壁ごと砂に沈んでいく。

 「うわっ」「えっ、なに?」

 あれはまずい。俺はドローンに切りかかろうと身構えた。

 「ハード・クレイ」

 背後から春香の声がすると、たちまちにシエラたちの足下の砂が固い岩に変化した。

 沈み込みが止まる。……でかした!

 俺は足の裏に魔力を込めて、ドローンに飛びかかった。

 空気を足場に空を駆け、剣にも魔力を纏わせてすれ違いざまに剣を一閃する。

 スパンッ。

 小気味のいい音がして、空気を断った俺の剣は、ドローンの片翼を切り飛ばした。

 「ぐわあぁぁぁぁ」

 叫びながら地面に落ちるドローンを見下ろし、魔力と神力を体に循環させる。剣がまばゆい光を放ち、俺はドローンを突き下ろした。

 ドローンの胸に突き刺さった俺の剣を中心に白い光が爆発する。

 「ば、ばかなぁ!」

 光に包まれたドローンの体が黒い塵となり、ボロボロと風とともに散っていった。


 「すごい! すごいよ!」

 王子がすごいすごいと連発しながら、いまだに剣を突き下ろした恰好の俺に近づいてきた。

 その後ろをシエラとユーミがやってくる。シエラが微笑みながら、王子に、

 「王子もいつか、あれと似たようなことができるようになるわよ」

と言っている。

 「本当?」

 「その剣の力を引き出せればね」

 シエラに言われて、王子は自分の剣を見た。

 「火竜王の剣。ボクに力を貸して!」

 すると王子の言葉に呼応するかのように、剣が赤く光った。


 やはりこの砂の塔がビンゴだ。なぜ砂魔人が現れないのかが気にはなるが、少なくとも王妃があの塔にいる可能性は高いだろう。

 「みんな。急ぐぞ。今の戦闘で明らかに敵に感づかれただろう。余計な邪魔が入る前に塔に入るぞ!」

 そういって一斉に走り出す。案の定、塔の上の方から空を飛ぶ魔獣が霞のように飛んできた。シエラが王子とユーミの手を引き、その後ろを俺と春香がつづく。

 春香が走りながら、けん制のために火球をいくつも飛ばす。頭上でいくつもの爆発の音を聞きながら、途中の砂の中から大きなサソリが出てきたので、一気に近寄って斬りかかる。

 春香と俺が空と地上の敵を防ぐ中を、三人が走って行く。

 「夏樹!」

 「おう! 俺たちも行くぞ!」

 三人が塔の入り口に到達したのを確認して、俺と春香も走り出す。

 その時、春香のそばの砂の中から、サソリの大きなはさみが飛び出した。

 「きゃ!」

 叫ぶ春香を抱き上げて、お姫様抱っこで駆け抜ける。近寄る敵をすり抜け、塔の入り口に飛び込んだ。

 俺たちが飛び込んだところで、シエラが神竜の盾で後続の敵を防いでくれた。

 シエラが外を見ながら、

 「どうやら中には入ってこないみたいね」

と言った。

 塔の中は広い通路になっていて、複雑な迷路になっていそうだ。

 慎重にまわりに注意を払いながら、気配感知を広げる。

 壁の向こうの通路などに魔獣の気配が幾つも感じられる。しかも生命力の強そうな気配がごろごろしている。

 「……ラストダンジョンって奴か」

 思わずつぶやきが漏れた。まるでRPGのような展開だ。

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