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転生したら女装するコトになりました?  作者: 九透マリコ
第六章 誰が為に鐘は鳴る
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閲覧とブクマ、そして評価してくださりありがとうございます。

 実は物心がつく前から傍にいたけど、未だに僕の中であの人の立ち位置が定まってなかったり。




 本日は曇りなり。というよりも、窓の外のどんよりと重たそうな灰色の雲を見る限り、雨はまもなく降ってきそう。

 そんな今の天気と似たような表情を浮かべているのは、目の前に座るミモザの花のような髪色の少年。いや、少女と言っても良いぐらいの可憐な美少年、で。ただ、僕の名誉のために言っておくけど、彼がそういう表情なのは僕と合流する前からでした。はい。誤解なきように。

「えっと、……ミ、フォッカーくん」

「……なんですか」

 声をかけただけでそんな沈痛した面持ちとかさぁ!泣かないでよ、お願いだから!

「今日は、アシュトン様から依頼を受けて、君のお勉強をちょっとでもお手伝い出来たらなぁと思っているんだけど、どの教科が苦手なのかな?」

「……」

 うん、そっかー。だんまりか。そっか。

 あー、でもこれって何故か懐かしいなぁって思ってたら、アレだ。前世で、いきなり弟が反抗期になった時の態度によく似てる。僕が中学校に上がった頃の。

 僕のやることなすこと全てに反抗してきて大変だったなー……って。

 この分だと、ミアくんも弟と同じ末路を歩みそう。どうしたものかな、と小さく息を吐き出せば。

「ねぇ、不満があるなら帰っても良いのよ?その代わり、私がたっぷりアル様を堪能出来るって事だよね?」

 と、僕の隣りでセラフィナさんが目を輝かせた。いや、その表現いかがわしくない?

「セラフィナ、後輩を挑発しない」

「えっ?だって勿体ないもん」

 彼女の横にいたマリウスくんに指摘を受けても何のその。ちなみに、勿体ないっていう感覚は『イエリオス信者』のセラフィナさんだけだと思うな。

「ミ、フォッカーくんはアシュトン様に教えてもらいたかったんだよね。嫌なら帰っても良いよ、上手く言っておくから」

 何せ、ミアくんにとってアルミネラ・エーヴェリーといえば、敬愛の人アシュトン・ルドーが陛下に懇願してまで求めた憎き存在だし。おかげで、僕は進級早々に酷い嫌がらせを受けましたとも。

 だからこそ、彼も停学処分を受けていて、やっと学校に来られるようになった。

 ほぼ一ヶ月も学校に来られなかったら、そりゃあ授業にもついていけないよね。自宅謹慎中でも家庭教師をつけてもらっていたらしいけど。

「……くご」

「え?」

「履修科目の異国語!……が、ちょっと苦手……です」

 うわぁ、ちょっと可愛いかも。唇を尖らせちゃって。さすがは美少年だなぁ。

 見た目は女の子にしか見えないという事もあって、恥じらう姿が微笑ましい。

「そっか、分かった」

「っ、わ、笑わないで下さい!」

 いじらしいなぁと思っていたら、それはセラフィナさんやマリウスくんも同じだったようで、顔を赤くしたミアくんに全員が怒られた。可愛いから仕方ない。

「それじゃあ、私たちは本を探してきますね」

「うん、ありがとう」

 全員が一通り荷物を置いて一息ついたところで、セラフィナさんとマリウスくんが席を立つ。

 そもそも、どうして僕たちが図書館に来たのかというと――きっかけは、休憩中に二人で話していた時のセラフィナさんの一言だった。


「そういえば、この世界に『桜』はないんですかね?」


 そこで、僕も以前からそう思っていたという話をしたら、本当にこの世界にはないのか、それともミュールズ国にだけないのか調べてみようという事になったのだ。

 セラフィナさんがもしかして王宮魔導師のマリウスくんなら知っているかも、というので訊いてみたらそんな花は知らないと言う。こうなったら、図書館で探すしかないと何故かマリウスくんも一緒になって、放課後になってから学院の図書館へとやってきた。

 本当はエルも誘ったけれど、彼女は生徒会の仕事で来られなくなってしまって。代わりという訳じゃないけど、入り口でばったり出会ったのがアシュトン・ルドーとミアくんだった。というのがダイジェスト。……まあ、そこでアシュトン・ルドーにお願いされたから、こうしてミアくんの勉強を手伝う事になったというわけで。

 学生を対象にした図書館であるにも関わらず、グランヴァル学院の図書館は他国に誇れるほど壮観な佇まいで蔵書の数も国立図書館の次に多かったりする。さすがは芸術の国ミュールズの貴族子弟が通う学校の図書館だといえる。蔵書が多すぎて、入りきらないから幾つか校舎にもあるんだけど。以前、その一室に僕とライアン、それからオリヴィアが閉じ込められたっけ。懐かしいなぁ。

 学院内という事で、生徒だけじゃなくたまに大人たちも見かけるのはここなら『貴族狩り』に遭う事がないっていう安心感もあるんだろうな。その心理はよく分かる。僕もここなら安全そうだって思えるし。

「さて、勉強しよっか」

「……ええ」

 前世に比べて、勉強は出来る方だと自負してる。ただ、アルといつでも交代出来るように平均を保っている状態なのもたまに疲れてくるわけで。

 この先、アルが本名でリーレンに入り直すのだとすれば、僕もその時は、とは思ってるけど。



 一体、何が僕たちにとって最善なのかな?



「エーヴェリーさん?」

「あ、ごめんね。教科書見せて」

 おっと。今は、ミアくんの勉強に集中しなくちゃ。




 それから、二時間にも満たない内に、ミアくんは分からなかった文法を理解してきたようだった。今は、簡単な問題を解いてもらっている最中。この子、元々頭の出来は良い方だから、コツさえ掴んだら直ぐに応用も利くんだよね。じゃなかったら、僕への嫌がらせだってあそこまで狡猾に出来てない。

 かりかりとペンを走らせるミアくんをジッと見ていれば、何故か横目で睨まれた。

「気が散るので、こっち見ないでもらえますか?」

「えっ、そ、そう?……分かったよ」

 うーん、辛辣。さすがミアくん、出会った当初から僕へのシビアな対応は持続中っと。

 それならば、と目の前で植物の図鑑を見ているセラフィナさんへと視線を向ける。

「何か見つかった?」

「いえ。なかなかそれらしいものが出てきませんね」

「よく分からないんですけど、レーヴの花とよく似た花で良かったんですよね?国内の植物系はある程度調べたので、外国の文献を調べてみても良いかもしれませんね」

 と言うマリウスくんの言葉に頷いて、歴史にも名を残す有名な画家が一生を賭けて描いたという天上絵を仰ぎ見た。……わあ、壮麗。じゃなくて。

 この世界には、レーヴという桜によく似た木が存在している。それこそ、夏の風物詩と言われるぐらいレーヴの花が咲き乱れている様は幻想的で美しい。現に、初夏に入った今の時期は、寮から校舎までの道にある並木に蕾がたくさん見られていつ咲いてもおかしくない。

 このまま外国の文献を漁っても見つかるかどうか。……どうしようかな。

 軽く息を吐き出して、チラリとミアくんを見れば目が合った。

「!!」

 って、ミアくんが驚いてるけど逆だよね?

「どうしたの?」

「……ま、まだ時間がかかるから、行ってきたら良いじゃないですか!元々、調べ物があるって言ってたのに無理に言ったのはこっちだし」

「えっ?ごめん、最後の方が聞き取れなかった」

「まだ時間がかかるので席を外してもらえますか!って言ったんですよ!」

 邪魔だし、と目線すら外したミアくんからの嫌われ度合いに泣けてくる。そこまで邪険にする事ないんじゃない?初めから嫌われているのは知ってるけどさ。ううっ。しかも、セラフィナさんとマリウスくんに何故か微笑まれているけど理由が思い当たらない。何なの?マリウスくんの反抗的態度が可愛いとか?いや、可愛いけどさ。

 考えても虚しいし、ここはお言葉に甘えてちょっと気分転換に行ってこよう、と席を立つ。

「じゃあ、探しに行ってくるね」

「あっ、私も一緒に行きます!」

 そこに、ちょうど図鑑を見終わったセラフィナさんが顔を上げた。なんてタイムリー。

「ついでに、その見終わったものを戻そっか」

 セラフィナさんの目の前に積み上がっている本が目に入ったので、ざっと数えてみれば十冊余り。これなら、僕が手伝えばあっという間に片付くとみた。――ふむ。

「わっ、す、すみません」

 セラフィナさんが手を伸ばす前に、半分ほど手に持つと彼女が申し訳なさそうに謝ってきたのでにやりと笑う。

「それよりさ、さっさと戻して今度は一緒に探そうよ」

 この行動で僕の真意が伝わると良いな、という思いも込めて。

 ミアくんの勉強をみる事になって、セラフィナさんに任せっぱなしになっちゃったからなぁ。ミアくんに邪魔者扱いされている間だけでも、一緒に調べられたら良いなと思う。

「……」

 ――のに、セラフィナさんが黙って俯いてしまったので内心で慌ててしまう。もしかして、怒らせちゃった?なんて怖々していれば。


「えへへ!そうですね」


 さすがはグランヴァル学院の三大美姫の一人。顔を上げて浮かべた微笑みは、即座にこの付近一帯の男性の視線を釘付けにした。

 僕ですら、一瞬息が詰まったほどで。マリウスくんに至っては、呼吸してー!と言いたくなるぐらいに固まってしまったのでその威力がうかがい知れる。……あー、暑い。多分、ここだけ一瞬にして体感温度も高くなってるよ。たまに、ランチ中でもセラフィナさんを囲む会の面々にそういった現象が起きるので、学院の間では彼女の愛称『春鳥の姫』にあやかって『春のヒートアイランド』とか呼ばれてる。なにそれ、笑いを取りたいの?と初めて聞いた時に内心で突っ込んでしまった僕は決して悪くない。

 話は戻して。

 この図書館は、建物自体が一つの芸術品のようで綺麗だけども、決してそれだけではない。ここの見所はなんと言っても内観で、その一つが最奥の女神や天使の彫刻があしらわれた大きな螺旋階段だといえる。

 その螺旋階段を使って、三階へ。

 優美な木枠の棚で出来た、数十にものぼる小部屋のようなスペースを繋げる通路を歩いて奥へと進む。

「この世界に桜が無いって知った時、実は嬉しかったんですよ、私」

 古い紙の匂いを嗅ぎながら進んでいると、セラフィナさんが眉尻を下げてえへ、と困ったように微笑んだ。

「そうなんだ。……どうしてって訊ねても?」

「私、桜が苦手なんです。咲き始めは綺麗だなって思えるんですけど、満開になって散っていく時に、風でよく花びらが舞いますよね。それが、凄く恐くって」

 なるほどね。セラフィナさんの言っている事は分からなくもない。昔、部活の遠征中に見た桜の名所の散り方は確かに儚いというより壮絶な終わりのようにも見えたっけ。

 僕は、前世の誕生日が春だったから桜は特別な存在で、近所の桜並木は好きな場所の一つだったけど。

「前世の小さかった頃の私は、あの花びらと一緒にどこかへ連れていかれそうな気がしてたんですよ」

 そんな事ある訳ないのに、とセラフィナさんが苦笑いを浮かべる。

「ああ、だけどそういう幼い頃の記憶って残りますよね。僕は、今の世界での事ですけど、真冬の朝に寒いなと思いながら起きたら、部屋の中にダンスをしているような対の雪の人形が所狭しと並べてあって、あれから雪は苦手なものになりました」

 しかも、別の日なんて屋敷の入り口に助けを求める雪だるまもあったしね。思わず、高い天井を見上げてしまう。

「……うわぁ、さすがアル様。それは、心中ご察しします」

 その時のアルのお言葉が「雪が積もったし、せっかくだからイオが寂しくないようにしようと思って!」との事だった。うん、その気持ちは嬉しかったけど、あの後の片付けで全身が濡れて風邪引いたんだよね、実は。

「出来たら、私もその頃からお知り合いになりたかったなぁ」

「アルのいたずらに泣かされたかもしれないから、なんとも言えません」

 多分、そういう事情は僕よりエルの方がよく知ってるはずだろうな。エルが遊びに来るようになって、初めの内はアルによく驚かされていたと思うから。

 妹の所業を雑談のネタにしながら歩を進めれば、目的の場所へと辿り着いた。

「それじゃあ、私は先に本を戻してきますね」

「うん、外国の文献はもう少し奥だから探しておくよ」

 植物系は一纏めにしているらしく、離れるといっても二つか三つほど小部屋が挟まるぐらいだった。それに、歩き回っている人も少なからずいるので、これなら一人になる心配は無さそうだ。

 セラフィナさんに本を渡してから、目的のスペースに入る。――と、先客に女性が一人いた。

「あ、すみま」

 『コ』の字型のちょうど真ん中に立たれていたので、少し避けてもらえたらと思って声をかける途中で声を失う。ついでの愛想笑いすら一瞬で消え去った僕の目に映っていたのは、こちらに向けられた歪な形状の短剣だった。しかも、刀身が小さく波打ってる所があまりにも悪趣味過ぎる。

「……」

 唾の広いボンネットで顔が分かりにくいけれど、僕よりも年上だと分かるその人は僕を廊下へと向かせて後ろから刃を腰へと軽く押し当てた。


 今まで、色んな危機には瀕していたけど、こういった命を奪われるかもしれないという非常事態に陥ったのは生まれて初めてかも。


 死と隣り合わせという感覚だけで、ぞくりと背筋が凍り付く。

 「……」

 いまだに相手が話さない事で不気味さが増してくるし、彼女がただ者ではないという事は直感じゃなくても分かってしまう。……こういう時って、意外と冷静になれるものなんだなぁ。

 ただ死を待つのみ、であるのならば、もうどう足掻いた所で覆せやしないのは明白だしね。

 それでも、滑稽な事にせめて今の自分がきちんと呼吸が出来るようにゆっくりと息を吸い込むと。

「アル様、そちらは見つかりました?」

 急にセラフィナに声を掛けられた事によって、少しばかりむせてしまった。

「えっ、だ、大丈夫ですか?」

「っ、ごほっ、大丈夫!そっちはもう終わった?」

「はい」

 となれば、彼女の事だからきっとここに来てしまう。この女性の目的が何なのか分からないけど、どうか彼女だけは。

「じ、じゃあ、隣りのスペースを探してくれないかな?」

「了解です」

 もしかしたら、余計な真似をして――と。刺されるかもなんて思ったけれど、どうやら僕の誘導について気にしてないらしい。


 って事は、目的は僕?


「静かに移動しろ」

 その考えに至ったと同時に、彼女からの正解も得てしまった。くっ。こんな時ぐらい、外れてくれても良かったのに。

 尖った刃先を制服越しに押しつけてくるので、刺されたくなくて必然と体は動く。多分、女性からすれば小さな虫をいたぶっているようなものに違いない。こっちは面白くも何ともないけどね!

 ここから離れる事が元々決まっていた事なのか、それともセラフィナさんの存在によって緊急で変更したのかすら分からないけど、どうやらここで死ぬ事はなさそうだ。『イエリオス』が好きなセラフィナさんを遺体の第一発見者にするのはさすがに残酷なので気が引けるし。……これで、良かったんだ。

 そう思って、ホッとしたのも束の間のこと。


「ぅ、わあっ!?」


 廊下に一歩足を踏み出した途端、まるで僕が出てくると分かっていたのか待ち構えていたセラフィナさんに、いきなり凄い勢いで腕を掴まれ思いきり引っ張り込まれた。

 力のベクトルは、彼女がいたと思われる隣りの空間。

 そして、要領が綱引きのそれとくれば。

「どっ、どうし……、っ!?」

「きゃっ!」

  当然、引っ張られた僕はセラフィナさんを押し倒す形になって。

「っ!」

 慌てて彼女から離れようとすれば、何故かぎゅっと抱きつかれてしまった。

「ちょっ、」

 いきなり、何が起こったのか分からず手を退けようと思えば、直ぐ後ろで金属同士がぶつかる衝撃音がして息を飲む。

 振り向こうにも、セラフィナさんが逃がすまいと僕に抱きついているので動く事すらままならない。かといって、このままでは女装の身とはいえ僕は男なので、ほんと、ちょっとまずいというか。僕にはエルがいるので、他の異性と過激な接触は控えたいと言いますか。ね?

「イオ様っ、ああ、良かった……イオ様が無事でっ!」

「……」

 よく見れば、僕を守る彼女の腕が震えてる。どうして僕の危機を知ったのかは分からないけど、多分セラフィナさんには相当の覚悟で助け出されたって事なんだろうな。

「……ありがとう」

 それと、僕より恐い思いをさせてしまってごめん。という念を込めて、ストロベリーブロンドの髪にそっと手で触れた。

 「はい、……はいっ!」

 あーあ、結局泣かせちゃった。ズビッと、何とも色気のない鼻を啜る音がして思わず苦笑する。少しの間だけなら仕方ないか、と諦めて廊下から聞こえる金属同士が弾く音に耳を澄ませていると。

 そこで、ようやく誰かがこの状況に気付いたらしい。直ぐに、「貴族狩りだ!」「貴族狩りが出たぞー!」という声が図書館内にこだまして、途端に悲鳴や怒号の嵐が吹き荒れてしまった。

「ッチ!」

 明らかに舌打ちしたのは、きっと僕を殺そうとしていた女性だろう。足音は聞こえなかったけれど、それから数秒後に剣を仕舞う音がしたので、どうやら女性を退けたんだろうと想像する。ああ、良かった……というべきなのかな。一人にはなるなと言われて、結局このざまだもの。情けない。

「主様、お怪我は?」

 とりあえず、セラフィナさんを押し倒しているこの状態をどうにかしたくて、何とか彼女ごと上半身だけ起き上がれば後ろから僕の侍女の声がして目を見張ってしまった。

「……サラ?」

「はい」

 という事は、もしかして。

「サラが助けてくれたの?」

 ここにいるという事は、つまりそうなんだよね?と、ようやく自由になった所で振り向けば。

「……」

 彼女にしては珍しく、両の手を拳に変えて首を振った。うん?違うの?

「私では敵いませんでした」

「えっと……じゃあ、別の人が?」

 そう訊ねれば、こくりと頷く。サラでも手に負えないとなると、その第三者は一体何者なわけ?物騒な人物で思い当たるとすれば、白い髪で赤い目をした駄目犬しか思いつかないんですけどー。

「ノア、なの?」

「違いますよ。違うけど、言えません。だって、内緒って言われたので」

 いつの間にか、サラからセラフィナさんに回答権が回っていたようで、彼女は涙に濡れた水色の瞳をきらきらとさせながら、悪戯を仕掛けるようにクスリと笑った。

「なにそれ」

 それは、あんまり過ぎるでしょ。と、一瞬にして気が抜けて。つい僕もつられて笑ってしまった。

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