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転生したら女装するコトになりました?  作者: 九透マリコ
第四章 色とりどりの世界
57/174

いつも、閲覧&ブクマ&&評価をありがとうございます。


この回のためにR15タグを追加しました。

意に沿わないBLご注意。


 ――君が、僕を必要とするように。






 前世の記憶が何度も蘇っては、熱を出していた幼い頃。

 アルミネラは、ベッドから出られない僕の顔を何度も何度も覗きにくるのが日課みたいになっていて。その度に、母上が珍しく一生懸命に植えた花をお見舞い代わりに取ってきたり、父上が大事にしていたグラスにどこから捕ってきたのか分からない小魚を入れて持ってきては、僕と乳母のマーナの心臓を止めにかかってきていた。ほんと、毎日がハラハラである意味、一番スリルを味わっていたんじゃないかと思う。

 それからしばらくして、どんどん熱を出す回数も減り、少しずつ僕も外へと遊びに行けるようになった時は、アルもすごく嬉しそうに笑ってたっけ。次はここ、その次はあそこまで、と範囲を広げながらあの大好きな楓の木に巡り会えた。

 そんな風に、ずっと、ずっと二人きりで毎日楽しく生きてきて、そこにエルフローラが加わっても何も変わる事などなかった。



 ――僕たちだけの、僕たちの世界。



 ずっと、これからも続くはずの未来。

 それは、変わらない永遠の世界だと思っていたのに。




 ああ。

 アルは、どうして。


 史哉のように……前世の弟のように、もう僕たちは混じり合う事なんて出来ないのかな?




 ギシッというベッドが軋む音がしたような気がして、意識が浮上していく。


 まぶたを開けた瞬間、ぼやけた視界に映り込んだのは人のような形だった。

 保健室の先生なのかなと思ったけれど、そういえば僕と入れ違いで二年生が実習中に大けがをしたとかで出て行ってしまったから、そんなはずはないと覚醒していく中でぼんやりしながら否定する。

 もしかして、フェルメールが様子でも見にきてくれたとか?

 ……なんて。悠長に微睡みを味わいながら思っていたけど、視界が鮮明になっていくと自分を見下ろす人物の髪が、フェルメールのヘーゼルブラウンの色ではなくて、黄金色に輝く稲穂のような金髪だと分かって直ぐに可能性を打ち消した。

 ――じゃあ、この人は誰?

 警戒を示すように心臓がはねて、相手が誰なのか目を見開けば、見覚えのある印象的な碧眼と視線が重なり。

「なっ、……んっ!」

 僕が驚くよりも先に、瞬時に僕の口を片手で覆って相手に先手を打たれてしまった。

「……っ!?」

 ――どうして?

 叫ぶ事も出来ず、焦った僕はその手をはがそうと必死で抵抗を試みてみる。けれども、その結果、相手の方が上手だったようで手慣れた様子でそれを逆手に取られ、両手を奪われる形となってしまった。

 嫌々と首を振ってみるものの、所詮は、大人と子供の違いだろう。

 彼はそれから易々と僕の両手を頭上に持って行き、そのままシーツへと縫い付けてしまった。

 もはや、これで身動きが取れにくくなってしまった訳だけど。何が起きたのか、いまだに頭が働かないおかげで脳の処理が追いつかない。

 ……それに、どうしてこの人がこんな所に?

 そう思わずにはいられない人物だっただけに、びっくりしている僕をあざ笑うかのように口角を上げて、僕を見下ろす相手は目を細めながら呟いた。

「……確かに、顔だけなら殿下のおっしゃられていた理由は理解出来る」

 その言葉の意味が言わんとする事。

 今の自分がおかれた状況も、そこでやっと理解出来て、息を飲んだ。

 そうか。殿下、という事は――やっぱりそうだったんだ、という意味も込めて、僕を拘束して見下ろしている男――エヴァン・アーリラ様を睨み付けた。


 この人は、ヒューバート様と繋がっている。


 だから、あんなあからさまに僕を監視していたという事か。今までの不可解な行動の意味がようやく分かった。

 ……ということは、この人は全てを知っていると思っていいんだろうな。

 さて、どうやって逃げ出すか……頭の端で考えながらも、視線を逸らさず無言で抵抗を試みる。

「ふん。ただまあ、そういう反抗的な態度は許せないな」

「っ!」

 そんな僕の態度が気に入らなかったのか、まるでお仕置きとばかりに拘束する力を強められて顔を顰めた。

 今回の視察団の中でも、見た目や身長も三年生の先輩方と変わらないはずなのに、力だけは他の大人と変わらないらしい。さすが、クルサード国の王族を相手に教師をするだけの事はあるようだ。なにせ、あそこは軍事国家なのだからこの人も並の教師じゃないと考えて良いだろう。

 けど、いくら油断してたとはいえ、まさか、今もまだ視察中にも関わらず、この男が単独でこんな場所には来られないはず。

 そんな僕の疑問が聞こえた訳ではないだろうに、アーリラ様は、それは愉しそうに顔を歪めて笑った。

「はっ。どうして、俺がここにいるのか不思議か?」

「……」

「憐れな子ウサギに、一つだけ情けをやろう。俺がここにいるという事実……それは、お前の仲間に手引きしたやつがいるという事だ」

「!」

 ――手引き?

 つまり、視察団を歓待している僕たち生徒の中に、アーリラ様の協力者がいたという事?

「ここに連れて行くよう命じたら、簡単にあの集まりから抜け出せた。あっさり売られてしまったなぁ、お前」

 ふくくっ、と含み笑いをして僕が傷付くようにわざと煽ってくる。

 こういう甚振り方が、まさにヒューバート様を彷彿とさせてくるのだから師と生徒だという事はまず間違いはなさそうだ。

 ……嫌な偶然。ほんと。

 クルサード国は、セレスティアよりも小さいけど、それでもこのミュールズよりは大きい国だ。なのに、視察に訪れた人がヒューバート様の関係者だったなんて。……世間は狭いっていうけど狭すぎでしょ。

 アーリラ様の協力者も気になってはいるけど、ヒューバート様との苦々しい思い出の方が強烈過ぎた。 精神をじっくり削り落とされていくような感覚が蘇ってきてゾクリと背筋を凍らせる。

 決して気を抜いていたはずではないのに、不意に端正な顔が近付いてきた。

「考えている余裕はないぞ?それとも、さすがは売女ということか」

 ……は?

 売女って、誰のこと!?

「っ!」

 もし、それで人を煽っているのだとしたら許さない。言いがかりにも程がある。アルの身代わりで女装をしているからといって、人を売女呼ばわりって。

「優秀な兄と入れ替わって、色んな男と愉しんでいるんだろう?」

「!」

 ……何を、言って?

「王族に嫁ぐ身で、よくもまあそこまで大胆になれるものだな」

 そう言い放つ間近から見る金縁に彩られた碧い瞳には、冷たい色に染められていた。

 ……そうか。

 この人は、僕とアルが入れ替わっている事を知ってるんだ。多分、それはヒューバート様から聞いたんだろう。だから、さっきも顔だけなら理解出来るなんていう言葉が出たのか。

 今、組み敷いている方を妹の方だと勘違いしているのだから。


 ――そう。この人は、今も僕とアルが入れ替わった状態だと思ってるんだ。


 それに思い至って、僅かに身体に動揺が走った。

 逃げ切れないほどに顔を近づけている男が、それを見逃すはずはなくクツクツと笑う。その動きに合わせて金糸のような髪が鼻先を掠め、思わずそれに眉根を寄せた。

「ああ、愉しいものだな。私の殿下を蔑ろにしたお前の兄に教えてやりたい。今から、お前の妹を辱めてやる、とな」

「っ!!」

 この人は、もしかして僕への復讐の為だけにここにやってきたってこと?

 アルを……妹を傷物にして、僕を後悔させる為だけに。

 ……なんて、非道な。

 それを、ヒューバート様が指示したというのなら僕は絶対に許さない。

「一つ、殿下の名誉の為に言っておくが、これは私の独断だ。だから、恨むならお前の兄を恨むが良い」

 よくもぬけぬけと!

 僕が、クルサードに行かなかったのが全て悪いって?だから、アルミネラが暴行される?

 そんなの、絶対におかしいよ。

 アルがどれだけコルネリオ様に憧れて騎士になりたいのか、僕は知ってる。

 それなのに、こんな事って!!

「っ!……っ!!」

 言葉を封じられた今、可能な限り身体を捩って抗議する。

「威勢が良いのは嫌いじゃないがな。怪我をしたくなければ、大人しくしろ」

 怪我なんて。……アルが襲われる事に比べたら!

 眉根を寄せて首を振る僕を見て、アーリラ様は明らかに呆れた顔でため息をはき出した。

「まさか、こんなにも負けん気が強いとはな。が、そういう女でも、抱いてしまえば男にすがりついてくる生き物だ」

 えっ?あれ?ちょっ、ちょっと、待って。

「そこらのガキ共より良くしてやる」

 ……アルミネラが暴行されるかもって思って散々、抵抗していた訳だけど。

 そういえばこの人、僕たちが正しい性別通りに入れ替わってるって知らないんだったよね?

 ……という事は。

「……」


 ――ピンチなのは、実は僕だって事だよね?


 うわぁあああああっ!!ないない!あり得ない!

 これが何もないシチュエーションで、こっちが女性だったら、こんな金髪碧眼のイケメンに迫られてドキドキするのかもしれないけどさ?まあ、僕は違う意味でドキドキしてますけどね!って、混乱している場合じゃない!

 何でこんな事に……なんて、涙を浮かべる僕を見て、アーリラ様の瞳に好色がさす。

 いや、なんで!?

「殿下は兄君にご執心なようだが、俺が見ていた感じ妹の方も有能そうだ。男なんかよりも、女は自分に堕としたら御しやすいというのに、全く殿下は」

 ブツブツと文句を言っているはずなのに、僕にとっては全て物騒な言葉にしか聞こえないのは何故でしょうか。ああ、どうすれば。

 この間も、気が付けば知らない人に乱暴されそうになっていたし。どうして、こう何度も同性に襲われなくちゃいけないの?女装だから?そこまで、僕は女の子に見えるって事ですか?

「ああ、そうだ。ついでに、手土産にでもすれば殿下も満足してくださるか」

「!?」


 は?いや、それはさすがに考え直して。


 っていうか、それは無理。絶対に無理。嫌だ。断固拒否。

 あの時は、皆が助けてくれたから助かったけど、またクルサード行きになるなんて考えられない。

 いーやーだー!なんて、暴れてみたものの拘束された手はやはり動かなかった。

 ……ここは、焦っても仕方ないんだろうか。それなら、少しは落ち着いて、何か違う方法を考えてみよう。

 えーっと。寡黙な人なんだって思ってたけど、意外とおしゃべりなんですね……って、雑談した所で現状が変わるとは思えない。

 うーん……そうだ。前回、前回はどうして助かったんだっけ?えーっと、確か……あの忍者、じゃなくてノア。ノアに助けてもらったんだった。でも、ノアはサラの弟子になってあっちにいるから、助けを呼んでも来るはずはない。はい、摘んだ!

 ……駄目だ。

 冷静に考えたところで、ピンチな事には変わりない。だったら、暴れるしか。

「……っ!……っ!!」

 口さえ開いていれば、大声を出すなり出来るのに塞がれている状態では、こうして精一杯足掻いて暴れるしかない。

 今まで温存していた体力も全て使って、激しく抵抗する。

「うっとうしい。全く、これだからガキなど色気もない」

 あーもう!うるさい!こっちは、あなたに襲われるのを食い止めたいだけだってば。

 嫌々と首を振って拒絶する。なのに、相手は一つ嘆息しただけで、いとも簡単に僕の上へと跨がってそんな抵抗さえ封じってしまった。

「……っ」

 ますます近付いた顔は、もう既に鼻先すら触れあう程で、息が止まる。

 確実に、先程よりもいっそう色を帯びた碧眼から目が離せなかった。

「噛むなよ」

 という言葉と共に、ずっと固定されていた手のひらが離れ――――



「っ、んぅ」




 彼の唇によって、塞がれる。




 驚いて目を見開く僕の油断を空かさずついて、彼は舌をねじ込むとそれはさまようことなく僕の舌を絡め取っていった。

「っ」

 あまりにも激しい応酬に耐えられず、息がきれて生理的な涙がぎゅっと閉じた瞼から溢れていく。

 ……生まれて初めてのキスが同性で、しかもこんなに深い口づけだとか。

 乱暴に口内をまさぐられては、僕の弱い部分を探し当てる。それが、僕にとっては十分も二十分も長い時間のように思えた。

「……ん、っ」

 わざとリップ音まで鳴らされて唇が離れていき、息も絶え絶えになりながらも瞼を開く。

「……ふん。ガキのくせに、イイ顔をするじゃないか」

 そんな訳ない!

 反論したくても、息を整えるのに必死で言い返すことすらままならない。

 油断している今がチャンスだというのに、身体に力が入らなくて苛立ちが襲った。

「どうだ、その気になってきただろう?」

 いまだ、酸素を欲するために何度も短い呼吸を繰り返す僕を見下ろし、嘲りを含んだ笑みを湛える。どこか色気を漂わせながら扇情的な動きで髪をかき上げて。

 視察団の中では、あまり目立たない存在だと思っていたのに、今は存在感を露わにしてその本性を隠すことなく僕に見せつけていた。

「足りないというのなら、もう一度してやろうか」

「ち、ちがっ!」

「涙目で言い返されてもな」

「こっ、これはっ」

 あなたの所為だ、と言ってやりたかったが、それもまた癪に障るので口をつぐむ。

「時間もない事だし、楽しませてもらおうか」

「ちょっ!」

 まだ手にも力が戻ってこないのに、アーリラ様は大人の余裕を見せつけるかのようにうっすらと笑う。止めてほしいと首を振っているのに、無情にも僕の緑色の制服のボタンをあっという間に外していった。 その手並みはあまりにも鮮やかすぎて、一瞬言葉を失ってしまうほどだ。

 そして、ワイシャツのボタンに手を掛けられた所で、我に返った。

「やっ、やめて下さいっ!」

「お互い、気持ちよくなろうと言っているだけだろう?」

 一方的でしょ、どう見たって!

 これは、本格的にまずいことになった。どうしよう、どうしようと頭の中をぐるぐる悩ませて、何か良い方法はないものか考えているのに、視界に映るのはボタンを一つ一つ外されていくという現実。

 このままでは、と思った所でアーリラ様から思わぬ言葉が飛び出した。

「女なんて、男の下で喘いでいればそれで終わるのだから、楽な仕事ではないか」


 ……あれ?


 もしかして、という一つの可能性が急遽、頭に浮かび上がる。かといって、本当にアーリラ様は僕が思うような人なのか分からないけど。

 というか、むしろ思いついたこの手段の方が僕にとっての罰ゲーム以外のなにものでもないような。

「あ、あの」

「何だ?」

 ワイシャツのボタンを三つほど外した所で声をかけたので、かなり不機嫌丸出しの顔になって睨みつけられた。

 恐いんだってば!

 なんて、怯えてなどいられない。ただ、これ以上酷い目に遭いたくなかったらここで頑張れ!という天使の声と、男としてプライドは持つべきでしょという悪魔の声がせめぎ合う。

 男に襲われている以上、どっちもどっちだ。

「言わないなら、続けるが」

 それは、嫌です!

「手を、その……手を放してもらえませんか?も、もう、抵抗しません……から」

 ……ああ。もう、やだ。

「やっと、その気になってきたのか」

「……っ」

 違う!!違うけど、何とでも言え!

 半ば自棄になっているのもあるが、この羞恥心に耐えきれなくなって、火照った顔を背けながら無言でそれに応えた。

 どうせ、直ぐに皮肉が返ってくるに決まってる。なんて思いきや、返事がなかったのでソロリと視線を向ける、と。

「……!!」

 う、うぇ?えっと、僕何か対応を間違えたかな?


 ……見てはいけないものを見てしまった。


 とにかく、心臓に悪い。何で、さっきよりも欲情してるんだよ!!

 もう一度、チラリと確認してみれば、やはりアーリラ様は明らかに興奮しているようで、先ほどよりもいっそう欲を孕んだ瞳をぎらつかせている。

 何故に!?

 僕、何も変な事言ってないよね?ただ、ちょっぴり恥ずかしかったけど手を放すようにお願いしただけだよね?

 ど、どうしよう。

 また頭を悩ませなくちゃいけないのかー!と、心の中で頭を抱えていたら、アーリラ様がそれまで痛いほどに強く拘束していた手の力を緩めてくれた。

「し、ししし仕方ないな」

 うわぁ。顔を赤らめての「仕方ない」ありがとうございます。

 解放された両方の手首を見ると、強く握られていた所為で痕が残っていて痺れていたけど今はそんな事よりもすべきことがある。

 手を放されたと同時に、ベッドの上にお互い座った状態になった次の僕がしなければならない事はというと――。

「……ん」

 力の入らない指をなんとか奮い立たせて、明らかに注視しているアーリラ様の異様な視線を気にすることなく、今は己のワイシャツのボタンを外そうと頑張った。

 そうだ。これは、僕自身の為なんだから頑張れ!

 それにしても、小さいボタンって指先に力が入んないとけっこう難しい。

 えっと、後いくつ残って……。

 ……。

 …………きりがない。



 もう、いい。

 これだけ残ってるのに、直ぐ指先に力が戻るわけないでしょうがぁぁあああ!!!!




 久しぶりに、頭のどこかがブチッと切れた音がする。

 と、同時に両手でワイシャツのボタンがつながっている部分を握って、勢いのまま開襟するよう左右同時に引っ張った。

「っ、おい。そこまでしなくても」

 残っていたボタンがはじけ飛ぶ中、さすがにアーリラ様もまさか僕がこのような真似をするとは思わなかったのか驚いて目を見張る。

 よし、今だ。

「……あの、ちゃんと見て下さい。何を勘違いされているのか知りませんけど、僕はれっきとした男なんです!」

 ほら、と言ってワイシャツを開けて男性特有の平坦な胸を見せつけた。

 知らない人にこんな事をしなければならない自分に羞恥心を感じながら、心の中では、どうかノン気でありますように!と何度も必死こいて願うのみだ。

 つまり、僕が立てた作戦は、早く僕が男だと証明する事だった。

 なにせ、彼は会話の中でずっと女性との性交しか話していなかったし。何より、男の僕を抱けると言ったヒューバート様の発言を否定していたからだ。

「……え?男、だと?」

「そうです。……まだ、お疑いなら下もお見せしましょうか?」

 嘘です。本当は、これ以上の拷問は耐えられません。

 だから、どうか!と、ミュールズの国民としては珍しいほど、この世界の万能の女神に頭を地面に伏して願いを請う。

 先ほどとはまた別の緊張が僕を支配していたら、しばらく呆気にとられていたアーリラ様の柳眉が寄せられたのが分かった。


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