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番外編 Mの悲劇

たくさんの閲覧&ブクマ&評価、ありがとうございます!

一章の番外編がこれにてラスト。一章の番外編であり、第二章の序章的なお話。

王子に侍っている一人の少年の独白となっています。

来週から、第二章へと突入します!また、お付き合いして頂けたら幸いです!


 その女については、最初っから気に入らなかった。



 初めて、その女を見かけたのは四年前だ。城内での日課だった薬草作りで土を弄っていた時の事。遠くの回廊から、騒がしい声が響いていて何だろうと思って振り返ったのだ。

「あっ!見てみて!こんなにたくさんのお花があるよ」

「へぇ、綺麗だね。あ、大きな野菜がなってる!一個、盗んじゃおっか」

「ばかっ、駄目だって!」

「へーき、へーき。誰もいないし、バレないって」

「こら!アルってば!」

 背丈は、ちょうど僕と同じくらいかな。そこには、全く瓜二つの顔の男女が畑に近づいてきていたから、僕は思わずしゃがみ込んだ。

 年齢も、多分僕と近いだろう。まだ幼さが残る双子の顔は、あどけなかったが綺麗だった。多分、年頃になればもっと洗練された美しさが際立つに違いない。

 だけど、美人だからといって勝手に他人の野菜を盗ろうとするんだなんて最低だ。そもそも、こんな辺鄙な場所に何しに来たんだろうか。

 親は、何をしているんだろう?

 そんな風に憤りを感じながらも、僕は自分の容姿を彼らに見られたくなくて隠れてしまったのだ。

 汚れた烏のような漆黒の髪に、闇を集めたような真っ黒な瞳。でも、あの二人は全く違う。太陽に透けて輝く白金の髪と宝石のような深い青色のキラキラと光る瞳。

 今にして思えば、初めてコンプレックスを抱いたのはその時だったのだろう。とにかく、自分が恥ずかしかった。

 そんな僕の事なんておかまいなしで、彼らはまだ畑で何やら騒いでいる。

「ほら、早くいこう?オーガスト殿下も、きっと待っているから」

「嫌だよ。あんな奴、トマトみたいに真っ赤でさ。私がトマト嫌いなの、知ってるでしょ!」

「トマトって……不敬だよ」

「笑ってるくせに」

「わ、笑ってない!」

「はいはい。じゃあ、そういう事にしておくから」

「アルのばか!」

「ばかって言う方がばかなんだよ」

 どうやら、彼らはこの城の王子様に会いに来たらしい。

 それなら、こんな所でしゃべってないでさっさと行けよな、と思わずにはいられない。何せ、この城の王太子殿下ときたら、我がままだと城内で働いている者たちには知られているからだ。

 僕はまだ王子殿下には会った事はないが、いつもお師匠様が苦笑いを浮かべながら王子殿下の事を話しているので間接的には知っていた。

「じゃあ、頑張って会うからさ、後でご褒美してくれる?」

 どうやら、女の子の方は相当殿下と会うのが嫌なようで、尚もごねている。

「ご褒美?どんな?」

「この間、コルネリオ様に会った時に貸してもらったハンカチ。同じのを作ってよ」

「はぁ!?あんな複雑な刺繍、無理だって!」

「そんな事ないじゃん。二週間前に、私がお母様の愛用してるストールで魚掬いして岩に引っ掛けて駄目にした時、ちゃんと直してたでしょ」

「そりゃあそうだけども」

「ね、お願い!」

「はぁ、もう。分かったよ、ちょっと時間がかかるけどいい?」

「やった!イオ、大好き!!」

「ったくもう」

 少年の方は、諦めたように何度もため息を付きながらそれでも少女に笑顔を向けていた。

 気が付けば一人だった僕には、兄妹という感覚が分からないがあれは甘やかし過ぎるのではないだろうか、と少し心配になってくる。どれだけ、あの少年はお人好しなんだと。

 それから、当然のように甘やかされる妹が気に入らなかった。

 自分には、そんな風に甘えられる存在がいなかったからなのかもしれないが。


 いや、もしかしたら僕はただ嫉妬していただけなのかもしれない。


 

 遠くなっていく足音に、ようやく体の緊張を解きながら身を起こした。

「マリウス」

「あっ、お師匠様!」

 僕には、兄弟など存在しない。

 そもそも、僕には両親がどういう人物だったのかも知らされていないのだ。

 僕の名は、マリウス・レヴィル。

 この城の闇を司る宮廷魔導師の資格を持つ者。その存在は、極限まで秘匿され王族でも極一部の人間にしか知られていない。

 宮廷魔導師の仕事は、主に時代の機転を王に教える重要な役割だ。戦始めの時期と終わり時。妃選びや王太子の選定。王に死が近づいた時など、それはもう様々な助言を行うのが務めなのだ。


 国王一代につき、宮廷魔導師も一代限りのみ。


 なので、僕は次期宮廷魔導師という将来が決まっている為、現・宮廷魔導師を師として日々宮廷魔導師についての教えを学んでいる。

 だが、表立って宮廷魔導師と名乗りは出来ない。名乗ったとしても、そんな役職がある事を知っている人は王族とごく一部の位の高い貴族ばかりなので、大抵の人は首を捻って終わりだろう。

 だから、この城に居る以上カモフラージュは必要なので、普段は薬剤師に擬態して生活をしている。それも、本物の薬剤師たちと共に生活をしているし、宮廷魔導師の仕事とは別に薬剤師としても仕事をしている訳だから、誰も違和感を覚えてはいない。


 正に、二重の生活というやつだ。


「後で、レーニーがいつもの薬を持ってきてほしいと言っていたよ」

「了解しました、まだ在庫があったので持って行きます」

「さっきは、どうして隠れていたんだい?」

「え、あ……いきなり、知らない子たちが近づいてきたから驚いちゃって」

「ふうん」

 スッと僕と同じ黒い宝石のような瞳が一瞬だけ薄まる。ただでさえ、冷たい印象を与える顔付きをしているのに、僕は内心ドキリとした。まるで、全てを見透かされているような。

「まあ、いいや」

「僕、双子なんて初めて見ましたよ」

「ああ。現宰相のエーヴェリー公爵家の双子だよ。妹がオーガスト殿下の婚約者さ。兄の方は、フェアフィールド公爵の娘と婚約していたっけか」

「へぇ。だから、王子殿下に会いに来ていたんですね」

 何気なく話しながらも、僕は大股で歩きながらお師匠様の横に並ぶ。お師匠様は、頭の上で一本に結び腰まで流れる黒髪をなびかせながら笑った。と、同時に銀で作られた装飾品もシャランと響く。

「お前も近々、王子殿下と会う事になるだろうよ」

「……」

 この国からしてみれば、少し露出の多いエキゾチックでカラフルな装束。豊満な胸を弾ませて、お師匠様は口角を挙げる。


 その笑顔は、まるで死神の宣告のようだった。


 陰で、お師匠様の事を魔女と呼ぶ人は多い。が、実際に彼女は魔女である。

 シンシア・ベルジュ・ド・テルマン。

 外見からして異国の人間だと分かるが、名前もそのように異国風で出身国は海路を挟んで北にあるトリエンジェという国だと公表している。実際は、生粋のミュール人なのだが、トリエンジェ人と同じく黒髪黒目なので偽っているのだ。

 かくいう僕も、お師匠様と同様に黒髪黒目なので、トリエンジェから引き取った子供だとしている。ただ、トリエンジェ語が話せないのは生まれてまもなく攫われて、人身売買にかけられそうになった所を救出されたという設定付きだが。

 実際は、両親がどういう人間かは知らないが分かっている事がある。

 それは、お師匠様は僕と血のつながった正真正銘本物の叔母であるという事だ。それは、お師匠様が僕に嘘偽りなく話してくれたし、テルマン家の血筋に代々現れる魔力の現れだという黒髪黒目が何よりの証拠だった。

 僕の母は、お師匠様の妹だったらしいが、魔力の表れが出たお師匠様は妹が出来る前に僕と同じように前の宮廷魔導師に引き取られた。

 その為、母は姉が居るという事実を知らず生きていたという。母は、魔力がなく一般的な蜂蜜のような金髪で。それから、大人になって父と結婚して僕が生まれた。

 アーモンドのような髪色の父は、黒髪黒目の僕が生まれて母を責めたそうだ。それも、そうだろう。お互いの髪色を受け継がない子供だったのだから。

 母は、当然テルマン家の血筋について父に抗議したようだが相手にされず、とうとう自ら命を絶ったのだ。その後、父がどうなったかは聞いていない。

 だから、僕もまたこうして宮廷魔導師に預けられた。

 けれど、決してテルマン家が代々宮廷魔導師を担ってきた訳ではないらしい。僕の叔母であるお師匠様と僕が続いたのが不思議なほどだという。



 ――これも、運命。



 お師匠様が度々そう呟くのを何度も見ている。

 だから、僕もそのように思うようにしている。例え、快く思えない王子殿下の宮廷魔導師となってしまっても。





 あれから三年後、僕はやはり運命だったのかオーガスト殿下の宮廷魔導師として拝命された。その際に、多少すったもんだな事故は起きたが、概ね殿下の事も理解できるようになり、殿下と一年しか居られないが同じ学び舎に入る事が出来た。

 問題は、僕と同じくグランヴァル学院に入学してきた例の双子の妹の方だ。入寮したという情報が届いたと同時に、殿下は誰が見ても分かるくらいに不機嫌さを露わにされるしまつ。

 ようやく、殿下へのお目通りが伝えられれば挨拶が遅いと一喝される。

 元々、僕もあの双子の妹には嫌悪しか抱けなかったから、殿下に怒られようが嫌われていようがどうでもいい存在なのだが。

 数日後、珍しく殿下に気に入られた女生徒と話す機会があって、彼女が事あるごとにアルミネラ・エーヴェリーを称賛する事に辟易した。

 それ以外では、実に可憐で心優しく気持ちの良いくらい純粋な少女、すごく可愛らしいというのも付け加えておこう、とにかく自分の荒んだ心を癒やしてくれる彼女に気持ちが傾倒していったのは言うまでもなかった。

 それは、僕と同じように殿下の右腕として隣りに並ぶテオドール・ヴァレリー様も同じようで、日ごとに彼女の回りに集まる連中が多くなっていった。その為、僕たちの共通意識は、回りを出し抜くような勝手は、多少は許されるが、最終的に決めるのは彼女。

 それは、殿下も同じ意見だという事。

 だから、そんなに急いでもいなかったが事件が起きた。言わずもがな、この間の新入生歓迎パーティでのオーガスト殿下暗殺未遂だ。殿下に何事もなくて本当に良かったと、あれ以来つくづく思えるのは、僕にも殿下への忠誠心があったのだとそこでようやく気がついた事実でもある。

 ただ、殿下をお助けしたのが最終的に、エーヴェリー家の双子だという事実だけは受け入れ難い問題だった。というより、殿下単体でいうならアルミネラ・エーヴェリーに助けられたという汚点だろうか。その顛末を見ていた者たちには箝口令を敷いたようだが、人の口にとは建てられるはずもなく、いまや学院中の話題となっている。



 殿下とセラフィナとアルミネラ・エーヴェリーとの三角関係。この上ない醜聞だ。



 そんな事実に、殿下はさぞや不機嫌になるだろうと思われたが全くそのようなそぶりもなく、ここ一ヵ月ほど珍しく大人しい日々を過ごされている。

 授業中は、教師の言葉に耳を貸し、休憩や放課後に入るとセラフィナに会いに行く。僕も異論もないため、殿下に付き従って堂々とセラフィナとおしゃべりが出来る訳だが。


 問題は、昼食で。


 相変わらず、殿下はアルミネラ・エーヴェリーと共に会食しているのだ。まあ、僕やテオドール様も同じく一緒の席に着いているのだが。

 今や、誰もがオーガスト殿下のご寵愛を受けているのはセラフィナだと知っているというのに、セラフィナも殿下も変わらずアルミネラ・エーヴェリーと一緒に食事をする事を止めないのだ。むしろ、自ら進んで行っているふしがある。

 セラフィナがアルミネラ・エーヴェリーに執心しているのは初めて会った時からずっと変わらないので分かるのだが、問題は殿下の方で。

 たまに、殿下を見ているとその視線は隣りに居るセラフィナではなく、目の前に居るアルミネラ・エーヴェリーである事が増えている。確かに、僕だって食事中のこの女には何度か心を揺さぶられた事もあるが。やはり、僕にはセラフィナじゃないと駄目だ。

 何故ならば、あの事件以来、別の席で食事をしていたセラフィナのシンパが、何故か堂々と一緒に食べ始めるようになってしまったせいで、僕はアルミネラ・エーヴェリーの隣りに座る確率が高くなってしまったからだ。

 嫌なのか、と問われたら百歩譲って否だろう。

 アルミネラ・エーヴェリーと食事をしたいセラフィナは、常に端の席に座る。と、なるとその横に座るのは必然的にオーガスト殿下だし、殿下を守る為にテオドール様は常に隣りに座られる。

 以前は、僕もその横に座っていたのだが、ある日、セラフィナのシンパが無理やり入ってきた為に、殿下の正面に座るアルミネラ・エーヴェリーの横へと移動せざるを得なくなってしまったのだ。

 その際、何がこの女の琴線に触れたのかは分からないが、僕にも話を振ってくる回数が増えた。

 ――が、それだけでは飽き足らず。

 僕が他の生徒より小さいからか、週に一度手作りの料理をご馳走される始末だ。

 何だって、こんな目立つような真似をされなくちゃいけないんだと最初は嫌悪でいっぱいだったが、食べていく内にちゃんと栄養が取れる料理ばかりを作ってきている事に感心した。

 その料理は、最初に食いついた兄の婚約者であるエルフローラ・ミルウッド嬢とセラフィナにも分けられているのだが、素直ではない殿下は未だに一度も口にした事がない。


 だからだろうか、最近まともにオーガスト殿下の目を見られない。


 見た目からして無理だと嫌がる僕に、アルミネラ・エーヴェリーはわざわざスプーンでそれを掬って受け入れさせようとするという行為をした時は特にだ。

 殿下は、何を考えておられるのか。僕には全く分からない。僕を憐れんでいるようにも見えるが、違うようにも見えるしで困惑するばかり。

 誰かこの立場を変わってくれるのなら泣いて喜ぶが、美味しかったりすると素直に美味しいと言ってしまう僕の言葉で、かの『月夜の妖精姫』が嬉しそうに微笑むのを正面から見られるのは胸中、複雑ではあるが眼福というものである。

 そう、アルミネラ・エーヴェリーとして見るのではなく、グランヴァル学院三大美姫『月夜の妖精姫』としてなら充分に値するだろう。

 僕だって健全な男なのだから。



 そういう思いを何度かした時の事だった。

 いつものように、受け入れがたい料理を差し出され困惑する僕という、いわば当たり前の日常に、その日いつものように一緒に食べていたセラフィナのシンパの一人が口を挟んできたのだ。

「いやあ、マリウス殿は羨ましいですね。こんな風に三大美姫に囲まれて……あ、そういえばオーガストも居ましたね」

 殿下の事を、まるで取ってつけたような言い回しで付け加えるというとんでもないセリフ。そもそも、この国の王子様である殿下に対して呼び捨てに出来る人間は、この学院に一人しかいない。

「ヒューバート様、それは失礼ですよ」

「はは、申し訳ない。けど、私たちは大事な大事な友好国なのですからオーガストは許してくれますよね、もちろん?」

「あ、ああ」

 どこかぎこちない笑みで頷くオーガスト殿下に、にっこりと殿下よりも王子様然と微笑むのは、隣国クルサードからの留学生で来ているヒューバート・コールフィールド様だ。

 ヒューバート様も、クルサードの王位継承者でつまりはれっきとした王子様である。そんなヒューバート様さえ、セラフィナは虜にしているのだから僕からしてみれば気が気じゃない。

 ここ最近、表面上は穏やかな感じではあるが、腹が黒そうなヒューバート様にはいつもオーガスト殿下は受け身にならざるを得ない状況である。それは、オーガスト殿下の秘密をヒューバート様が握っているのだが……この件は、僕と殿下だけの、つまり宮廷魔導師として今現在請け負っている問題である為、誰も気が付いていないだろう。


 勘の良いこの女以外は。


「信じられない!こんなトマトのような真っ赤な頭に気が付いてないとか、本気で仰っているので?」

 しれっと、自国の王子を貶められた事に腹が立ったのか、当然のようにアルミネラ・エーヴェリーは皮肉を返す。ここに居る誰もが彼女の真似は出来ない。

 何故ならば、彼女は国の最高権力者、陛下公認の婚約者であるのだから。

「ぷっ、と、トマトって」

「黙れ、アルミネラ!」

 真っ赤になった殿下に対して、何人かは一瞬呆気にとられるも吹き出しそうになるのを止めて俯くが、ヒューバート様は堂々と笑われる。

 つまり、我々に対してわざと殿下と対等である事を示しているのだ。

「っふふ、これは一本取られましたね。申し訳ありませんでした、オーガスト。あなたが毎日この時間帯、セラフィナ嬢とミルウッド嬢、それからアルミネラ嬢を独占しているので、嫉妬していたのです。許して下さい」

 ああ、そう来るか。

「そうだったのか?ならば、……そうだな。マリウス、一つ横にずれろ」

 きっと、ヒューバート様の狙いは初めからそこだったのだ、と今になって気が付くが、時すでに遅しだ。

「……わかり」

「ちょっと待ってよ!この子は、絶対にここだから。席を空けるなら……そうだなぁ、セラフィナさんごとずれて、いや、待てよ?そうしたら、エルの前にヒューバート様……それは駄目、絶対に駄目!もう、いっそこれから二人で食べよっか、エル」

 呆気に取られる僕たちをおいて、途中で考えるのが面倒になったのかとびきり嬉しそうな笑顔で、アルミネラ・エーヴェリーはミルウッド嬢にそんな提案をし出す。それに慌てたのが、セラフィナと殿下だ。

「 えっ、えっ!?嫌です、私もアルミネラ様と一緒にお食事したいです!」

「そ、そうだ。か、仮にもお前は俺の婚約者なのだから、勝手な行動は許さんぞ!俺とフィーナ、それからお前たちが端っこに居るのが駄目だというんだろう?ヒューバート」

「そうですね」

「だったら、いっそ真ん中に座ろうではないか!」

 殿下にしては良い提案をした。少し感動した僕だったが、それに眉根を寄せたのはアルミネラ・エーヴェリーだった。

「……いいけど、それならエルの横は一つ空席にしてよね」

「あ、ああ。分かった」

 何となく頬が赤いミルウッド嬢も気になったが、それよりも回りが大騒ぎになっていたのは言うまでもない。

 たかが昼の席決めではあるが、所詮、僕らは健全なる男子なのだ。三大美姫を囲みながら食べられるという至福に、歓喜しない者はいないだろう。

 そんな中、ヒューバート様だけは仮面のような微笑みを浮かべているだけであった。






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