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《騒ぎ》第六回

「そうよ…。少しは分かるとみえる。姿を心で捉えよ」

 そういうことか…と、左馬介は思った。樋口の諌言(かんげん)以降、一馬は構え直すと微動だにしない。

「どうだ? わしの姿が見えてきたか?」

 樋口の語り口調は、背後から声を掛けた幻妙斎と、どこか似通ったところがあると左馬介は感じた。それにつけ、皆が山上のことを余り話題にしなくなったのは何故なのか…。実のところ、左馬介の胸中は、稽古よりも、そちらの一件が気掛かりなのである。今し方も、井上と神代が話していたのも長谷川がいないという好都合な口実があったからだが、食事やそれ以外の場合でも、ほとんど話題を耳にすることはなくなっていた。自分が知らされていないだけで、皆には蟹谷が山上のことは口するな…と、釘を刺したのではあるまいか。左馬介は、少なからず疑心暗鬼に陥っていた。

 長谷川は午前の稽古があと暫くで終ろうとする頃に戻ってきた。長谷川が蟹谷へ目線を送り、合図めいた首を縦に振る仕草をする。蟹谷も、その投げられた視線に気づいて、

「よ~し、これ迄! 皆、やめ~い!」

 と云い捨てると、長谷川が立つ道場入口へと歩き去った。そうして、長谷川に何やら語り掛けながら消えた。

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