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《騒ぎ》第一回

 門弟達は、全てが次男坊以下の無駄飯食らいと呼ばれる連中であった。長兄が家禄を継ぎ、いつの日か家を出なければならない身の上だが、彼等は自ら家を去り、この葛西にある堀川道場へ入ったのだった。無論、幻妙斎の意に(かな)わず、左馬介の父の清志郎がそうしたように、足繁く通って入門を請い、漸く許しを得た者も一人、二人はいたが、大方は容易(たやす)く入門を許された。ただ一人、葛西者の樋口静山だけは、皆から“偏屈者”と、陰で揶揄(やゆ)される通い者だったから、左馬介には、この男だけが、そうした勝手気儘(きまま)が許されている背景に何かある筈だ…と、思えていた。

「樋口さんは地の人ですし、通っておいでなのですから、私共よりは経緯(いきさつ)はよくお知りなんじゃないでしょうか」

 十五才の若造が…とは、誰も云わなかった。夕餉の飯を装う左馬介に、皆の視線が釘付けになった。

「秋月! その通りだ。その手があったか…。よく云ってくれたな。おい! 迂闊(うかつ)だったぞ、皆」

 一同から褒めの溜息が漏れた。直接、口にして褒めた蟹谷でさえ、気づかなかった考えだった。左馬介と同じように中央に座って切り盛りする一馬が、汁を装いながら、

「そうでしたねえ…。何故、気づかなかったのでしょう…。流石ですね、左馬介さん」

 と、声を掛けた。

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