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《師の影》第二十五回

 気づけば、左馬介は床板へ倒されていた。

「馬鹿者! そのように捨て身で打ち込む奴があるか。これが本身ならば、お主は、もう斬られておるぞ。隙がなければ、打ち込んではならぬ!」

 井上が、やや強めの声で叱咤(しった)した。及ばぬ悔しさは確かに左馬介の胸中に湧き起こったが、それでも、稽古をつけて貰えた喜びの方が数倍の重さで心の奥底を満たしていた。

「なんだ…泣いておるのか?」

 井上は微笑を浮かべた。

「い、いえ、別に…」

 ごまかして、左馬介はすぐ立ち上がった。自分でも信じられないのは、両頬を流れる(なみだ)であった。悟られまいと咄嗟(とっさ)に袖で顔を拭いながら元の位置へと急ぎ、井上に堤刀(さげとう)の姿勢で対峙して一礼した。そして、ふたたび中段に構えた。

「よし…。すぐに打ち込むなよ」

 そう云って、井上も中段に構えた。その時、左馬介の脳裡に、幻妙斎の言葉が甦った。

━━ 全体を、遠方の山を眺めるように、おおらかに観よ、という教えじゃ… ━━

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