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《師の影》第十八回

 いつの間に現れたのか、左馬介の背後には、十日程前と同じように幻妙斎が立っていた。

「そうじゃ、一つだけ教えてやろう。日々、無益に座しておるだけでは気の毒じゃからのう…。獅子童子を、そなたの稽古相手だと思い、眺めてみよ。見るのではなく眺めるのじゃ。これを、遠山(えんざん)の目付と云う。頭、安らかに揺れる背、尻尾などを一ヶ所のみ見るのではない。全体を、遠方の山を眺めるように、おおらかに観よ、という教えじゃが、分かるかのう?」

 左馬介は後方から響く声に、振り向くことも出来ず、「はい!」とだけ返していた。

 実のところ、解せた訳ではなかった。ただ、先生の言葉全体を記憶に留めました…と、そんな意味合いで、『はい!』と答えたのだった。十日程前もそうだったように、その言葉の後、幻妙斎の姿は、微かな風を起こすこともなく忽然と消えていた。左馬介が振り向くと、師の姿など何処にも無く、僅かな気配すらも残っては、いなかった。

 左馬介の胸中には、幻妙斎が口にした ━━ 遠山の目付 ━━ という言葉が残響し、師から初稽古を受けたような気の昂りを感じるのだった。

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