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《師の影》第十六回

 やがて、見守る左馬介を余所に、心地よさそうに背の毛並みを上下に震わせつつ寝入ってしまった。この猫が道場にいる…ということは、間垣一馬が云ったとおり、先生がこの身近で観ておられるということだ…と、左馬介は道場の入口や窓など、外から展望が効きそうな辺りを見渡したが、やはり先程と同じで寸分の気配も感じられないのであった。左馬介は、ひとまず、そのことは諦め、ふたたび八名が繰り広げる形稽古を無心で眺めることにした。この日も、変人扱いの樋口静山だけは帰ってしまい、既に場内にはいない。四組の形稽古は続いた。

 左馬介が稽古を眺め、四半時も過ぎただろうか。午後の部の形稽古は、やがて終わろうとしていた。結局、この日の左馬介は、蟹谷に呼ばれ、歩き稽古をつけて貰うこともなくおわろうとしていた。左馬介が思わず欠伸を一つ打とうとしたその時である。左馬介は棒のような物で背を押されるような刺激を受け、思わず振り返った。左馬介の背後には、杖を右手でつき、凛として立つ幻妙斎の姿があった。

「今日は稽古をつけて貰えなかったようじゃのう…」

「は、はい。今日は急に猫なぞが入ってきたりしたものですから…」

 左馬介は、笑って流そうとした。

「ほう…、あの猫か?」と、幻妙斎が指さす方向を見て、「はい!」と左馬介は素直に応じた。

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