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《師の影》第十四回

 呼び声に、ギクッと両眼を見開くと、眼前には幻妙斎が杖をつき、穏やかな表情で立っていた。

「どうだ…。少しは慣れたかな?」

 慌てて半身を垂直に立て、正座の姿勢をとる左馬介を笑いつつ、幻妙斎は続けた。

「そう、堅苦しゅうせずともよい。今は、休める時に休んでおきなさい」

 静かに語るその声に、左馬介は思わず平身低頭の姿勢をとった。そして、頭を(おもむろ)に上げると、ほんの今まで存在した幻妙斎の姿は跡形もなく消え失せ、誰もいないのだった。またもや、幻妙斎の離れ技を眼にした左馬介であった。

━━ 神技だ…。皆が先生のことを口にしないのは、しないのではなく、恐らく出来ないのではないか… ━━

 幻妙斎が口にした通り、畳上へ仰臥し、楽な姿勢をとると、左馬介の胸中に、ふと、そういう想いが巡った。

 昼からの稽古は、幻妙斎の言に従ったのがよかったのか、門弟達が組になって行う形稽古の様子が、座って観る左馬介の眼に何故か鮮明に映じていた。瞬時に振り下ろされる素早い剣の捌きまでもが、ゆったりとした緩慢な動きに見えたのである。その時の左馬介には、疲れが引いた所為(せい)に違いあるまい…と、思えた。

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