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《師の影》第九回

「では、…戴くとするか」

 師範代の蟹谷が、誰に云うでもなく、のっそりと云った。その言葉を皮切りに、バタバタと身動きをしながら、一馬と左馬介は分担して汁と飯を装う。葛西の樋口と、道場主の幻妙斎を除く七名分である。装い終わると、門弟達は各自、合掌して食べ始めた。その後、自分達の分も装い、食べ始める一馬と左馬介である。

「先程、途切れた話の続きなのですが…、そこへ置いた膳は…」

 一馬が指さす片隅の膳は、既に消え失せていた。合点がいかないことに、見回しても、自分以外の八名の者は座って席に着き、食べているのだ。と、なれば、いったい誰が膳を運んだというのか?幻妙斎が持ち去った、と考える以外にはない左馬介であった。

「先生の指図で、今は蟹谷さんが世話方で…」

「すると、膳の運びも…」

「そうですよ…」

 食べながら、至極当然のように語る一馬である。左馬介の両眼には、座して飯を食らう蟹谷の姿が映るのだ。いつ、運んだのか? 左馬介には、この謎を、すぐ解けそうになかった。

 次の日の夕餉、左馬介は昨夜の謎を見定めようと、堂所(どうしょ)の片隅に置いた幻妙斎の膳から片時も眼を離さなかった。

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