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《師の影》第五回

「では皆、いつものようにな!」

 蟹谷が辺りに散らばる門弟達に放った。左馬介の稽古模様を周囲から茫然と眺めていた門弟七名は、ザワザワと中央へ躍り出て二人ずつ対峙し、組となった。六名が三組、一人残った者が蟹谷と組んでいる。この一見、何げない組み合わせも、暗黙の内に定まっているかのようである。昼からの稽古は形稽古であるから、打突を相手に加えるものではない。(ひたい)の汗を拭いながら、左馬介は繰り広げられる形稽古の様を片隅から眺めていた。その時、左馬介の眼に異様な光景が飛び込んできた。いつの間に現れたのか…、幻妙斎が涼しげな眼差(まなざ)しで中央の神棚前に座し、正面に展開する弟子達の木刀による形稽古を見据えて観望しているではないか。このお方は、神か魔物か…。左馬介は、その唐突な去来の不気味さに鳥肌が立った。幻妙斎をふたたび見ると、既に眼差しは閉ざされ、深く瞑想するかのようである。左馬介も真似て、静かに両眼を閉じた。すると、視覚が遮られた為か、余計に聴覚が研ぎ澄まされ、「ウムッ!」とかの門弟達が放つ微細な吐息までもが鮮明に聴こえてくるではないか。左馬介は暫しの間、その状態で音を聴いていた。そして、(おもむろ)に両眼を開けた左馬介は、ふたたび衝撃を受けた。

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