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《惜別》第二十九回

「これでいいかな? …他に訊ねたき儀があらば即答するが、どうだ?」

「いいえ、もう他には、これといって…」

 事実、左馬介にはそれ以上、心に(わだかま)ることなど、なかったのだ。

「そうか…。では、久しぶりに鰻政で鰻の美味いのでも食って帰ったらどうだ? 俺も今、食って、ここへ来たところよ」

「はい、有難う存じます。では、この辺りで…」

 長居をする用も他になく、左馬介は蓑屋を出た。礼を返したのは兎も角、鰻を食べて、のんびり帰ろうとは取り分け思っていない左馬介である。それに、気を削がれることが一つあった。以前、番傘を借りた折りに見た、腰掛け茶屋、水無月の娘が、どうも左馬介の脳裏から離れないのだ。あの時以来、娘には会っていなかった。それで…という訳でもないのだが、蓑屋の情報を教えて貰った(あるじ)に、ひと言だけでも挨拶をしておこう…と思ったからである。ただ、娘がいたら…と仄かに思う潜在意識が働いたのも確かだった。

 水無月は未だ暖簾を掛けてはいたが、そうは云っても既に夕刻である。恐らく、娘に会うことはないだろう…と、思うでなく左馬介は踏んでいた。

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