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《旅立ち》第六回

 腹が空いていた所為(せい)か、その日の夕餉は、質素な料理膳にもかかわらず、左馬介には美味に感じられた。里芋の煮付け、小鮎の飴炊き、味噌の汁椀、そして香の物で、麦半分の白飯である。気楽に楽しむといった旅ではないのだから、左馬介に不平などあろう筈がなかった。それに空腹だったことが幸いしたのか、妙に箸が進んだ。気づけば、飯櫃(めしびつ)から軽く三、四杯は片付けてしまっていて、中はもう空だった。

 その夜はぐっすり眠れて、翌朝は早く宿を立った。昨夜来、降り続けた雨は上がっていたので助かった。左馬介の思惑では、昼八ツ時には遅くとも葛西へ到着する手筈であった。生憎、宿を立つ前、番頭に訊かなかったのが悔やまれたが、昼に食す握り飯は忘れずに作って貰ったから、まあそれでよし…と、左馬介は道を急いだ。

 葛西の地に至る残りの道中は、田畑伝いに続くなだらかな道で、昨日の山道の険しさが嘘のようであった。左馬介は急ぐでもなく、その平坦な道を、気分よく長閑(のどか)に歩いていた。雲の切れ間より覗いた蒼空からは、陽光が光線状に漏れ、射している。ふと振り返れば、昨日越えた山麓にかかる七色の虹が、なんとも絶妙の景観を描いていた。

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