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《惜別》第十九回

 左馬介は過去、何度か権十に会っているから、よく見知っている。恐らく権十の方も、顔さえ見れば堀川の一門衆だと分かるに違いない…と、左馬介は考えていた。

 鴨居と敷居が歪み、入口の引き戸は、なかなか開きそうになかったが、それでも漸く開いたので左馬介は中へと入った。権十は左馬介の顔を見るなり、ペコリと一つお辞儀をして頭を下げた。権十の他には家族らしき者は誰もいず、どうも権十は一人者のようだ…と、左馬介は推し量った。

「お座布でも、お敷き下さいやし…」

 そう云われて奨められた座布団を見れば、外布が破れ、入れ込んだ綿の塊が半ば食み出している。云われるままに座ろう…とは、とても思えぬ代物(しろもの)であった。また、その食み出した綿の塊というのが何とも面妖で、黒みがかった薄墨色の暗雲を彷彿とさせ、云わば塵埃とも思わす外観を醸し出しているのであった。流石の左馬介も、奨められはしたものの、暫し戸惑った。だが、(おとな)っておきながら、そんな不作法に我を通すこともなかろう…と、素直に座ることにした。頼みごとを抱えている、ということもある。

 左馬介が腰を下ろすのと同時に、一端、奥へと消えた権十が、盆上に湯呑みを乗せて左馬介の前へ進み出た。

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