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《惜別》第十四回

 そう云うと、長谷川は苦笑した。

 三人は堂所で握り飯を頬張りながら雑談に花を咲かせた。この時期は流石に屋外で食べるというのは余り気が進まない。囲炉裏が部屋の片隅に、どっかりとあり、上から吊るされた自在鉤に掛けられた鉄瓶からは、シュンシュンと湯気が立つ。更には、その下で小火がチロチロと燃えている…。そんな暖を取れる場で食うのが適する極寒の時期であった。

「左馬介、先生のご様子は如何であった。俺も暫く、お会いしておらぬのだ」

 鴨下に話した折りには、いなかった長谷川が、何故、幻妙斎に左馬介が謁見したことを知っているのか…。そのことが解せぬ左馬介であった。

「お前の動きなど、大よそ分かっておるわ」

 負けん気が出たのか、長谷川はそう放つと、高らかに笑った。左馬介としては完全に一本取られた形だ。しかし、師範代の面子(メンツ)もあるのだから、左馬介としても鷹揚に構えて、敢えて深く絡まない。

「それは、そうです。長谷川さんですから…」

 引かれてしまえば、長谷川としてもそれ以上は突っ込めないし、一応は顔も立ったのだから相応だと思えた。

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