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《惜別》第七回

 当然、息の乱れも微かで、誰が見たとしても、残月剣を、ほんの今、描いたとは思えない程、もの静かな左馬介であった。

 床へ上がった左馬介が部屋へ入ると、いつの間に現れたのか、獅子童子が幻妙斎の枕辺で眠っていた。暫く見ぬ間に随分、年老いた感が拭えぬ老猫である。そうは云っても、急を要する時は、瞬時に何処ぞへ消え去る謎めいたところがあり、幻妙斎と似通っていた。その獅子童子は、左馬介が枕辺へ近づくことなど意に介さぬ態で安眠しているのだった。

「左馬介…。残月剣はどうにか出来たようじゃのう。が、今後も技を究めること、怠るでないぞ。腰の村雨丸が泣かぬようにな…」

 そう静かに云うと、幻妙斎は高笑いした。それは、左馬介が久々に耳にした師の笑い声だった。

「ははっ! 肝に命じまして!」

 云うでなく、自然と左馬介の口から声が出た。それほど幻妙斎の姿には、云い尽せない神威性が漂っていた。

「そなたが名声を馳せる姿をひと目、見たいと思おておったがのう、この(わし)もそう長くはない」

 左馬介は伏せていた顔を上げ、師を見上げた。

「それは、如何なる故にござりましょうか?」

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