表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
582/612

《惜別》第六回

この迅速な太刀捌きは、やはり以前よりは鋭い冴えを放ち、もはや、 なに人をも近づけぬ凄味を見せていた。当然、そうした左馬介の一挙手一投足を、つぶさに見て取る幻妙斎が、そう思っていない筈もなかった。

「見事じゃ…」

 ひと言、そう告げた幻妙斎の声は、やはり幾らか弱めに思えた。左馬介も幻妙斎に今、見事と云わせたほどの者である。師の微かな弱りを見逃す訳がない。瞬間、変化を、つぶさに感じ取っていた。しかし、幻妙斎は未だ崩れ落ちるほど衰弱している訳ではない。万が一、そうだとしても、達人であり神の如き存在の幻妙斎が、左馬介の前に倒れる自らの姿を晒す訳がなかった。左馬介もそのようなことは必然として、よく分かっている。また、気遣ったならば、ふたたび(たしな)められるのが目に見えていた。それ故、左馬介は(ひざまず)き、師の言葉に対して深く(こうべ)を垂れるに留めた。

「…近う参れ」と、幻妙斎は傍らへ左馬介を手招きした。左馬介は云われるまま、ふたたび床へと上がった。

 話は少し戻るが、『見事じゃ…』と幻妙斎が告げた折りには、既に左馬介が握る村雨丸は居合いの如く(さや)へと納められていたから、幻妙斎に対して(こうべ)を垂れた時点では、事前と変わらぬ左馬介の外観なのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ