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《惜別》第五回

次の瞬間、左馬介は俊敏に立ち上がり、同時に大刀を引き抜いた。 手にする太刀は、紛れもなく幻妙斎が左馬介に与えた村雨丸である。一糸の息の乱れもなく、即座に左馬介は残月剣の形を描き始めた。もう躊躇する何ものも左馬介にはない。ただ一途に、武芸者であることに左馬介は専念し続けた。中段の構えから上段へ、そうして崩れ上段の構えへと移行する。この構えは、無論、剣道の教則には未だない左馬介が編み出した独自の構えである。正に、左馬介が残月剣と命名したその太刀捌きであった。崩れ上段は両手を天に向けて万歳する恰好で剣を押し抱いく構えであり、左馬介は高々と上げた村雨丸の峰を左手の親指と人差し指の間に刀掛けの如く乗せて持つ。幻妙斎は、以前に観た時と違う工夫がなされているかを(つぶさ)に見て取る。次の一瞬、左馬介の(つか)を持つ右手が動いた。当然、それと同時に刀身は左手から俊敏に離れている。しかも、その刀身は空を舞って一回転した。目にも止まらぬ速さとは正にこれで、更に続けて、右上から左下の(はす)へと袈裟懸けに振り下ろされたのである。振り下ろされる直前に戻って詳述するならば、空を舞った直後、即ち、振り下ろされる直前には、右手一本で持たれていた柄に左手も合流していることになる。故に、袈裟懸けに振り下ろされる直前の太刀は、気合い諸共、両の手で振り下ろされたのだ。

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