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《惜別》第三回

「案ずるな、大事ない…。そのような大声を出さず、落ちつけ。少し、 疲れただけのことじゃ。それよりもその(ほう)ここへ参ったからには、剣の工夫が成ったと見えるが…」

「はい! 今日は、先生にひと目、ご覧戴きたく、罷り越した次第でございます」

「そうであったか…。では見てとらす故、障子戸、板戸を開け放ち、庭へ出るがよい」

「はい!」

 左馬介は、ふたたび幻妙斎の操り木偶となり、障子戸と板戸を次々に開け放っていった。すると、たちまち、屋外の朝焼けが部屋へと射し込み、辺りは行灯の灯りがいらぬ程の明るさとなった。ひと通り開け放った後、左馬介は庭へと降りた。勿論、草鞋(わらじ)は入口で脱いで上がったのだから、裸足である。足元の冷えは修練で鍛えられてはいるが、やはり冬場故に地面は冷たく、どこか、ぎこちない。それでも、今はそんな悠長なことを云ってはいられない。幻妙斎に見分して貰える唯一の機会だからだ。というのも、この先、果してこうした機会に恵まれる可能性は、僅かに残されているとしか左馬介には思えなかったのである。無論、幻妙斎の年齢や体調を(おもんばか)ってのことだ。

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