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《残月剣④》第二十一回

左馬介は、そういえば、ここを通ったような…という気がした。当然、適当な距離で布切れを熊笹に結わえて進んだ。すると、二町ばかり進んだ所で、熊笹の群生が嘘のように忽然と消え去った。そして、目前に出現した景観は、左馬介も見覚えがある山道だった。左馬介はこの時、何気なく熊笹に分け入ったことを、ふと想い出したのである。何気なく分け入てしまった結果、我を忘れたのか…と、思えた。しかし、その何気なく分け入った機転があればこそ、結果として理想的な稽古場を探せ出せた、とも云えるのだ。左馬介は、この入口を忘れまいと、黄色の布切れを数箇所、あちらこちらと括り付けた。こうしておけば、明日、登ってきた時に見落とすことはなかろう、と思えたのである。ここからは知っている山道を下るだけだ。左馬介は下山を急いだ。別に急ぐ必要がない程、夕刻迄には未だ充分な時があった。

 左馬介が道場へ戻ったのは夕方の七ツ時であった。通用門を潜った時、丁度、円広寺で撞かれる夕七ツの鐘が鳴り止んだから、刻限を知ったのである。玄関の(かまち)を上がり、渡り廊下を進むと、長谷川と鴨下が形稽古」をしている姿が垣間見えた。受けの長谷川は飄々と立ち鴨下の方は力を漲らせた様で臨んでいる。茶々を入れるというのも(はばか)られ、左馬介は稽古場を黙礼しただけで素通りした。

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