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《残月剣④》第二十回

反動を予測したとすれば、頃合いの平地もあり、申し分ない。(まなこ)を凝らすと、熊笹の一角が、すっぽりと空洞になっている箇所があった。無論、そこから這い出した…としか考えられない左馬介だ。その空洞から抜けて細道を下山したとしても、次に、この場へ行き着ける保障は何処にもない。左馬介は暫し、想い倦ねた。すると、神仏の御加護か、一つの閃きが脳裡を過った。そうだ…、幸い持ってきた風呂敷がある。それも、骨董の蓑屋で貰った黄地の風呂敷だ。これを裂いて所々に括り付け、下れば明日、それを目安にして登ればいいのではないか…。左馬介に刹那、閃いたのは、そうした発想であった。風呂敷の一枚くらい、また蓑屋を訪った折りに貰えば事は足りる。左馬介は、握り飯を包んできた風呂敷を胸元から出し、脇差で切れ目を入れた。そして、その風呂敷を細かく引き千切り始めた。瞬く間に三寸ばかりの布切れの山が出来上がり、左馬介はそれ等を、ふたたび胸元へ押し込むと山を下りることにした。勿論、抜け出るのは、熊笹に、ぽっかりと開いた穴のような出口らしき部分からだ。まず、その熊笹の茎へ布切れを括り付け、熊笹の中へと分け入っていった。前方や上方は、かなり繁った熊笹の群落に覆われてはいるが、よく見れば、下方には(けもの)道のような細道が、はっきり続いているのが分かる。

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