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《残月剣④》第十九回

そこが妙義山の中腹であることは、通い慣れた土地勘から大よその推測がついた。しかし、そこに至った経路については、記憶が剥落していた。未だ昼には少し早い木漏れ日が樹々の間から射し込み、左馬介に幾らかの暖かさを恵んだ。その場に至った過程はどうであれ、左馬介は、ひとまず納得出来る稽古場に辿りついたことで、ほっと胸を撫でおろした。そうなると、後は道場からこの場に至る道を、しっかと頭に叩き込むだけである。左馬介は、取り敢えず、握り飯を頬張ることにした。

 四半時ほどが経っただろうか。漸く腹も満たされ、左馬介は腰を上げると、まず自分が立つ位置を、ひと回りした。というのも、この場に至った以上、必ず山道がある筈だ…と踏んだからだ。当然、その道進んでこの場に今いるのだから間違いないと左馬介は思った。辺りは、左馬介が立つ位置から五間ばかり向うを熊笹が覆い尽くしている。以前、山崩れか何ぞがあり、地肌の赤土が剥き出しになった後、年月が経って熊笹が取り囲んだのだろう。そう考えれば、鬱蒼と繁る樹々の山地に、ぽっかりと、こうした禿げ地が存在することも得心がいく。(いずれ)にしろ、適当な木立ちが左右に一本ずつあり、そのどちらにも、縄を結わえ、木切れを吊るす為の適した枝が伸びているのだ。

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