表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
551/612

《残月剣④》第八回

そして、振り下ろされた時点では、既に体は鴨下側へ向きを変えて立て直され、中段に構えられていた。正眼に構えを整える迄の俊敏さも、前回よりいっそう速さを増したようであった。鴨下が動いたことに驚いたのは、左馬介よりも、むしろ長谷川である。長谷川も、当然ながら打ち込む機会を狙っていたから、予想外の鴨下の打ち込みは、機先を制された感が否めない。だから、その後、体勢を立て直すまでの左馬介に打ち掛かればよかったのだが、師範代の面子がそれを許さなかった。鴨下に続いての二の太刀は、なんとも格好が悪い、と長谷川は躊躇したのだ。そうはいっても、打ち込まないという訳にもいかず、結局はひとまず引いて、ふたたび床へ座すのを待ち、次の攻めに掛かる腹を括った。

 左馬介に動揺は一切、見られなかった。やはりそれは、長い修行の成果であると云わざるを得ない。鴨下などは、打ち下ろした竹刀が床を叩いたことで、左馬介の腕を改めて知らされた格好であり、ただ茫然と立ち尽くしている。長谷川の方は、そこまで不様(ぶざま)ではないものの、それでも、もはや勝ち目がないことを認めた伏し目がちの面相で立っていた。左馬介は、ふたたび床板へと座し、静かに竹刀を左脇へと置く。その時、鴨下が突然、低姿勢な言葉を吐いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ